ミナの精霊の儀
庵に漂う空気が一変し、神樹の芽が青白い輝きを放った。その光はまるで星々の粒子のように広がり、ミナの胸へと吸い込まれていく。仲間たちの視線が自然と彼女に集まる中、ミナは深呼吸をして魔導銃を抱きしめた。
「……ついに、私の番だね」
声には不安よりも、わずかな高揚が混じっていた。支援役として仲間を助けてきた彼女が、初めて真正面から自分の覚悟を問われる瞬間だった。
◇
視界が揺れ、意識は不思議な空間へと導かれた。そこは、果てしなく続く本棚と、天井に広がる星空が重なり合う場所。無数の書物が宙に浮かび、文字の光が流星のように空を駆けている。
――知を求める者よ。お前は何を望む。
声は静かだが、無限の知識を背負った重みがあった。ミナはぐっと拳を握り、正面を見据える。
「私は……ただの支援役じゃ終わりたくない。知識も技術も、全部を仲間の未来を切り開く力にしたい!」
その言葉に、本棚がざわめき、無数の書物が開いては光を放った。光はやがて銃口へと集まり、術式の紋が浮かび上がる。攻撃、治癒、結界、罠……すべての可能性が弾丸に込められて脈動していた。
――ならば、その叡智を形にせよ。名を与えよ。我はお前と共に在ろう。
ミナは胸を張り、声を響かせた。
「知識と記録を力に変える叡智の精霊! 私が呼ぶ名は――『ロゴス』!」
その瞬間、星空が砕けるように光を散らし、全ての輝きがミナの体と《アルキメイア》に注ぎ込まれた。銃は青白い光に包まれ、かすかな音色を響かせながら応える。
◇
現実へ戻ったミナの背に、光の羽根のような幻影が広がった。彼女の周囲を漂う文字の粒子が、叡智の象徴として淡く煌めく。
「ミナ……!」アマネが驚きの声を上げる。
リュシアは微笑み、「あなたの知識が未来を繋ぐんだわ」と静かに告げた。
ジークは口元を吊り上げた。「なるほどな。お前らしいじゃねぇか」
カイルは感心したように頷き、「これで仲間の守りがさらに強固になるね」と言った。
エリスティアも温かな眼差しを向けた。「戦場を支配するのは、力だけではありません。叡智もまた、大いなる力です」
ミナは頬を少し赤らめながらも、堂々と仲間を見渡した。
「ふふん、これで私も立派に一人前だね! もちろん、みんなのサポートも忘れないけど!」
庵に笑い声が広がる。その中で、ミナの瞳は誇らしさに輝いていた。叡智の精霊と共に歩む新たな未来が、確かにその手に握られていた。
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