アルトの精霊の儀
庵を満たす光が静まると、次に神樹の芽は淡い金色の輝きを放った。その光はまっすぐにアルトへと伸び、彼の胸を優しく包み込む。仲間たちは自然と息をひそめ、その瞬間を見守った。
「……僕の番か」
アルトは深く息を吸い、黎剣セラフィードを正面に掲げた。盾と剣が組み合わさったその武器は、彼の覚悟を映すように重厚な光を帯びて震える。
◇
意識が揺れ、光の中に新たな景色が広がった。そこは、無数の光柱がそびえる世界。ひとつひとつが守りの結界のように立ち並び、中央には巨大な翼を持つ影が静かに座していた。その影からは威圧ではなく、包み込むような安らぎが漂っている。
――力を求めるのか。
低く響く声が空間を震わせた。アルトは一瞬ためらったが、すぐに首を横に振った。
「違う。僕が求めているのは力じゃない。皆を守り抜くための――揺るがない意思だ」
その言葉に、影の眼が金色に輝いた。周囲の光柱が震え、盾のようにアルトを囲む。だが圧迫感はなく、むしろ温もりが胸を満たしていく。
――ならば、名を与えよ。我はお前の覚悟を映すものとなろう。
アルトは剣を構え、力強く声を放った。
「光の守護者よ。僕が呼ぶ名は――『セラ・ガーディアン』!」
その瞬間、影は光へと溶け、黎剣セラフィードに宿った。盾には金色の紋が浮かび、剣は淡い光刃を纏って震える。アルトの体を柔らかな力が包み込み、勇気と責任がひとつに結ばれるのを感じた。
◇
現実へと戻ったアルトの背に、巨大な翼を広げた幻影が浮かんでいた。庵の空気は澄み渡り、仲間たちの胸に温かいものが広がる。
「……これが、アルトの精霊……」リュシアが小さく息を呑む。
ジークは腕を組み、満足げに頷いた。「らしいじゃねぇか。守りに徹してんのが、まんまお前だ」
ミナはぱっと笑顔を弾けさせる。「これでもう誰も傷つけさせないね!」
エリスティアも静かに頷いた。「揺るがない守護……これ以上ない加護です」
アルトは少し照れながらも、皆を見渡して言った。
「僕の剣と盾は、勇者を支え、仲間を守り、この国を未来へ繋ぐためにある。それが僕の役目だ」
その言葉に、アマネは柔らかく微笑み、そっと一歩近づいて彼の肩に手を置いた。
「アルトだからこそ、みんな安心できるんだよ」
金色の光はゆっくりと収まり、庵には穏やかな余韻だけが残った。新たな契約は確かに結ばれ、未来を守る誓いがそこに刻まれた。
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