アマネの精霊の儀
庵の奥で、神樹の芽がひときわ強く輝いた。その光がゆっくりと揺らめき、仲間たちの視線を自然とアマネへと導く。白い光の粒が彼女の周囲を舞い、やがて胸へと溶け込むように吸い込まれていった。
「……次は、私だね」
アマネは小さく微笑み、 《継星刀アストレイド》をそっと抱きしめた。緊張と高揚が同居するその瞳に、力強い決意の光が宿る。仲間たちは息をひそめ、その瞬間を見守った。
◇
意識が別の空間に導かれる。そこは空と大地が交わるような神秘の光景。天空には燃えるような太陽が、地には草木や岩々が命を宿してざわめいていた。
――燃え盛る光と炎を司る力。
――森羅万象に寄り添い、あらゆる生命と共鳴する力。
二つの気配が同時にアマネを包み込む。ひとつは灼熱の流星のように鋭く、もうひとつは大地と風の調べのように優しい。二重の響きが彼女の心を震わせた。
「……二体……?」
驚きに息を呑むアマネ。しかし次の瞬間、彼女は強く頷いた。――これが自分の役目。仲間を導く者として、光と自然を受け入れること。
「私は……仲間と共に歩む勇者、アマネ。あなたたちの力を、この身に託してほしい!」
二つの気配が応じるように重なり、アマネの全身に熱と安らぎが流れ込む。刀身が淡い光を帯び、流星の煌めきと森羅の息吹が重なった。
◇
現実へと意識が戻る。アマネの背後に太陽の輝きと大地の鼓動を象徴する幻影が揺らめき、庵の空気を満たした。仲間たちはその壮大な光景に目を見張る。
「アマネ……!」リュシアが息を呑み、アルトも驚愕を隠せない。ミナは「すごい!」と歓声を上げ、ジークは「二体同時なんて……ありえるのかよ」と低く呟いた。カイルとエリスティアも目を見交わし、言葉を失っていた。
アマネは息を整え、両の手で刀を掲げる。その瞳は迷いなく澄んでいた。
「……あなたは、燃え盛る太陽の光。私が呼ぶ名は――『ソル・イグニス』!」
力強い声と共に、太陽の精霊が光をきらめかせて応える。
「そして、すべての命を抱く自然の調べ。私が呼ぶ名は――『オムニア』!」
柔らかな声に、大地の精霊が静かに共鳴した。二つの名が庵に響き渡ると、温かな風が吹き抜け、仲間たちの胸に深く刻まれる。
「……二体の精霊と契約だと? やっぱりアマネは……」アルトが目を見開き、言葉を詰まらせた。
リュシアは口元に微笑を浮かべた。「ううん。これがアマネだからこそ、なんだと思う」
ジークは唸り、ミナは「やっぱり頼れるね!」と無邪気に喜ぶ。カイルとエリスティアは感嘆を隠せずに頷いていた。
アマネは微笑んで仲間を見渡した。その声は静かに、しかし確かな力を宿していた。
「これで、もっと遠くまでみんなを導ける。さあ……次に続いて」
庵を満たす光は、仲間たちの未来を照らす道標となった。
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