公爵令嬢クラリス、再び
ソレイユ王都に戻った一行を待っていたのは、華やかな街の喧騒と、見覚えのある声だった。
「まぁまぁ!やっと帰ってきたのね、アマネ!」
通りの人々が振り返るほど朗らかな声と共に、緋色のドレスを纏った女性が駆け寄ってきた。豊かな金髪を揺らし、上品な仕草の奥に少女のような熱を秘める――公爵令嬢クラリスである。
「クラリス様……!」
アマネが少し驚いたように目を見開くと、彼女は迷わずその手を取り、ぎゅっと抱きしめた。
「やっぱり無事だったのね……! ああ、アマネ、会いたかったわ!」
突然の抱擁に、周囲の仲間たちが一斉にざわめいた。
アルトは苦笑し、ジークは腕を組んで「相変わらず派手だな」とぼやき、リュシアは「ふふ」と小さく笑った。
クラリスはようやくアマネから離れると、頬を赤らめながら言葉を継ぐ。
「もう……危ない旅ばかりして……。わたしの心臓がいくつあっても足りないじゃない」
「す、すみません……でも、もう大丈夫ですから」
アマネは少し戸惑いながらも微笑んだ。その姿にクラリスの目が潤み、また今にも抱きしめそうな勢いだった。
「クラリス様って……」
後方でミナが小声で呟く。「アマネさんのことになると、周りが見えなくなるよね」
「まあ、愛情表現のひとつってやつだな」
ジークが肩をすくめると、リュシアが小悪魔のように微笑んだ。
「でも……年上のお姉さまにこんなに慕われるなんて、羨ましいわ」
その言葉にアマネはますます困惑し、耳まで赤くなった。
クラリスは仲間たちを見渡し、優雅に微笑んだ。
「あなたたちも……よくぞ無事に。ソレイユは今、あなたたちの帰還を祝う空気で満ちているわ。けれど……」
そこで声を潜める。
「同時に、魔王軍の影も広がっているの。だからこそ――アマネ、あなたの傍にいたいの」
真剣な言葉に、一瞬場が引き締まった。
だが次の瞬間、クラリスはおどけたようにアマネの腕を取り、耳元に囁いた。
「だって……勇者を支えるお姉様って、素敵でしょう?」
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