魔導銃アルキメイア
夜明けの鐘が遠くで鳴った。鍛冶場の炎はなおも赤々と燃え、ミナの額からは大粒の汗が流れていた。腕は鉛のように重い。だが、その瞳に迷いはなかった。これまで仲間を支えてきた自分、そのすべてを込めて、いま最後の一打を振り下ろすのだ。
「……これで終わり!」
槌が鉄を叩く音が高らかに響き、青白い光が銃身全体に走った。ファエリアの描いた流路と、ブリューナの鍛えた鋼が一つに融け合い、淡い脈動を放ち始める。水晶が共鳴し、幻影と現実が重なっていく。
やがて――炉の中から現れたのは、一丁の銃だった。滑らかな金属の筐体に魔力の刻印が刻まれ、銃口からは淡い青光が脈動している。その姿は水晶に映った未来と寸分違わぬものだった。
「……完成だ」
ブリューナの声は低く、だが誇りに満ちていた。
ミナは震える手で銃を受け取る。冷たい金属の感触が指に伝わり、胸の奥から熱いものが込み上げる。「これが……私の、武器……」
その瞬間、仲間たちから歓声が上がった。
「やったな、ミナ!」ジークが豪快に笑い声を響かせる。
「見事だよ」アルトは盾を胸に当て、真摯に頷いた。
リュシアは静かに祈るように両手を組んだ。「あなたの努力が、実ったのね」
アマネが一歩前に出て、優しく声をかける。「おめでとう、ミナ。君だからこそ、この銃がここに生まれたんだと思う」
ミナの目から、大粒の涙が零れ落ちた。必死に拭おうとするが、次々に溢れて止まらない。「私……本当に、できたんだ……」
ファエリアが肩に手を置いた。「もう、ただの助手ではない。今日からお前は、一人前の技師だ」
ブリューナも頷く。「そして戦士だ。仲間と共に歩むにふさわしい、一人前のな」
仲間たちが次々と祝福の声を送る中、ミナは銃を胸に抱きしめた。その重みは、これまでの努力と仲間との絆の証だった。
庭では、即席の的が設置された。ミナは深呼吸をして、銃を構える。引き金を引いた瞬間、青い閃光が走り、的が眩い光と共に粉々に砕け散った。
「すげえ……!」ジークが口を開けたまま見つめる。
「これが……アルキメイア……」アルトが感嘆の息を漏らした。
アマネが笑う。「やっぱり、似合ってるよ」
ミナは涙を拭いながら、銃を高く掲げた。仲間たちの拍手と笑顔がその姿を照らす。長い道のりを越え、彼女はようやく自分の武器を得たのだ。
「これからは、この銃と一緒に……皆と並んで戦う!」
その宣言に、仲間全員が力強く頷いた。夜明けの光が鍛冶場を満たし、新たな一歩を照らしていた。
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