表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

354/471

継星刀アストレイド・前篇

ジークの大斧が完成してから二日が過ぎた。鍛冶場にはいまだ余熱が漂い、炉の奥で赤々と揺らめく火が次なる創造を待っていた。その前に立つのはアマネ。仄暗い布に包まれた旧い刀を前に、彼女は静かに息を吸い込んだ。

「いよいよだね、アマネ」

ミナがそっと声をかける。彼女の手は火ばさみや水晶を自然に扱い、助手としての役割に自信を深めていた。かつては戸惑いがちだった手元が、いまは迷いなく動いている。その笑みには仲間への誇りと、自らの成長への確信が滲んでいた。

アマネは頷き、水晶に手をかざす。淡い光が揺らめき、未来の姿が映し出された。漆黒の鞘に収められた刃。刀身の中を細い光の筋が流れ、天を駆け抜ける流星のように瞬いていた。

「……これが、私の新しい力」

アマネの声は小さかったが、その胸の奥に湧き上がる熱は確かなものだった。

庭ではジークが轟斧ヴァルガルムを担ぎ、アルトとリュシアを相手に実戦形式の訓練を繰り返していた。振り下ろされる斧は重さと炎の気配を纏い、アルトの盾が火花を散らしながらそれを受け止める。リュシアは杖から放つ光で軌道を逸らし、三人の動きは徐々に呼吸を合わせていった。

「まだまだ荒いな、ジーク!」アルトが声を張り上げる。

「分かってる! でも必ずものにする!」ジークは歯を食いしばりながら返した。

そのやり取りを見ていたギルド所属の亜人戦士――ランドルフは、腕を組んで小さく頷く。「強くなってるな。仲間がいるからだ」

鍛冶場では、槌音が再び夜を震わせていた。ブリューナが炎の色を見極めて鉄を打ち延ばし、ミナが水晶を覗き込みながら刀身の反応を読み取る。彼女の額にも汗が滲むが、手元は確かだった。ミナにとっては鍛冶の一打一打が修行であり、友の未来を形づくる責任でもあった。

「星々は巡り、消えてはまた輝く。アマネ、お前の刀はその循環を受け継ぐものになるだろう」

ブリューナの声が響き、火花が飛び散るたび、ミナは槌の音と呼応するように心を刻んでいた。かつての自分なら見逃していた炉の揺らぎや鉄の音色を聞き分け、補助を超えて鍛冶の一端を担いつつあった。

夜が更け、炉の炎が揺らめく。まだ完成には遠いが、アマネは仲間と共にその姿を見守り続けた。鍛冶場に立ち込める熱気の中で、希望の光が刃へと宿り始めていた。


お読みいただきありがとうございます。いけるところまで連続投稿!(不定期ですが毎日目標)。

面白かったらブクマ&感想で応援いただけると嬉しいです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ