轟斧ヴァルガルムと共鳴の光
ジークの武器――《轟斧ヴァルガルム》の鍛造は、これまでのどの武器よりも時間を要した。巨躯にふさわしい斧は膨大な魔力を宿し、鍛造のたびに雷鳴のような火花を散らした。ブリューナは黙々と鉄槌を振るい、ファエリアは符を刻んで雷の暴走を抑える。ミナは汗を流しながら魔力流路の制御に奔走し、炎の炉は数日間燃え続けた。
その間、庭では別の訓練が積み重ねられていた。エリスティアとリュシアが並び立ち、それぞれ精霊弓アウロラと継杖ルミナリアを構える。アマネが見守る中、二人は息を合わせて魔力を放った。
「――共鳴、始めます」リュシアの声に応じて、結界の光が広がり、精霊弓の矢を包み込む。
「光よ、翔け抜けて!」エリスティアが弓弦を引くと、矢は眩い光翼を纏って放たれた。
光の矢は結界の中心を突き抜け、夜明けのような輝きで訓練場を照らす。木立が一瞬で浄化されるように光に包まれ、仲間たちが歓声を上げた。
「以前の黎明衝破を応用したのですね」カイルが感嘆を漏らす。「範囲も威力も格段に増しています」
リュシアは額の汗を拭い、隣のエリスティアに微笑みを向けた。「ええ。練習の甲斐がありました」
エリスティアも矢を収め、静かに頷いた。「あなたとなら、どこまでも届きます」
アマネは柔らかな声で二人を称える。「二人の共鳴は確かな力になってる。戦いの中で必ず仲間を守ってくれる」
◇
数日後。炉の熱気が最高潮に達した頃、ブリューナが最後の鉄槌を振り下ろした。轟音が洞窟を揺らし、巨大な斧が炎の中から姿を現す。刃は雷光を帯び、柄は大地の力を宿すように重厚だ。
「……完成だ」ブリューナが低く告げた。
ジークが斧を握り上げると、稲光が周囲を駆け抜け、地面が震えた。仲間たちは一斉に息を呑む。
「これぞ俺の武器だ!」ジークが豪快に笑い、稲光がその背を照らした。
仲間たちは呆れながらも頼もしさを感じ、胸の奥に確かな安心を覚えていた。轟斧ヴァルガルムの誕生は、彼らの布陣をさらに強固なものにしたのだった。
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