精霊弓アウロラと黎剣の試練
黎剣セラフィードを手にしてから二日。アルトは庭で実戦訓練に臨んでいた。剣を握り、盾を構える。仲間の視線が集まる中、アマネが木刀を手に前に立つ。
「いくよ、アルト!」
アマネの突きを盾で受け止め、同時に剣で切り返す。初めはぎこちなかった動きも、繰り返すうちに徐々に滑らかになっていく。そしてついに、アルトは一歩踏み込み、剣と盾を同時に前へ突き出した。
『――戦域展開!』
盾が青白い光を放ち、半径数メートルに守護の領域が広がる。仲間たちが驚きに息を呑む中、アルトはさらに剣を振り抜いた。
『共鳴刃(フィールド制御)!』
盾の光と剣の斬撃が共鳴し、衝撃波のような刃がアマネの木刀を弾き飛ばす。地面に砂煙が舞い、アルトは肩で息をしながらも確かな手応えを感じていた。
「……すごいね」アマネが木刀を握り直し、笑みを浮かべる。「それが黎剣の力ね」
アルトは頷き、胸を張った。「仲間を守りながら戦う……それが俺の役目だ」
◇
その頃、鍛造場では新たな作業が進められていた。今回の主役はエリスティア。彼女のために鍛えられるのは、精霊と同調する弓――《精霊弓アウロラ》だ。
「弓は精霊との調和が命。形だけでは成り立たない」ファエリアが両手を広げると、光の糸が舞い、炉の周囲に精霊たちの気配が満ちていった。
ブリューナは弓身となる希少鉱を赤々と燃える炉に入れ、慎重に形を整えていく。鉄槌の音が響くたび、淡い光が弓の骨格を走る。ミナは横で流路の刻印を補佐し、集中を切らさない。
「アウロラ……夜明けの光を意味する名です」ファエリアの言葉に応えるように、弓身を包む光はより鮮やかに揺らめいた。
エリスティアは静かに目を閉じ、精霊への祈りを捧げる。その背後では、森で救った白銀の聖獣が姿を現し、じっと鍛造の光景を見守っていた。蒼い瞳が炉の炎と交わり、まるで未来を託すかのように煌めく。
やがて、弓が完成の光を放った。滑らかな弦が張られ、淡い朝焼けのような輝きが弓全体を包み込む。
「――精霊弓アウロラ、完成です」ファエリアが告げた瞬間、弓は澄んだ音色を奏でた。まるで精霊たちが祝福の歌を響かせているかのように。
エリスティアは両手でそれを受け取り、矢を番えて軽く引いた。矢は光の粒となり、鍛造場の天井を射抜くようにまっすぐ飛んでいった。その輝きは朝の空のように澄み切り、仲間たちの胸を震わせた。
「……これが私の、新しい力」エリスティアの声は静かだったが、その瞳には強い光が宿っていた。
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