黎剣セラフィード
アルトの鍛造が始まって五日目。炉の奥ではブリューナが滝のような汗を流し、剣と盾を同時に鍛つ重労働に挑んでいた。ファエリアは符を刻み、ミナは黙々と魔力流路を調整している。長く重い工程も、ついに終盤に差し掛かっていた。
「……よし、仕上げだ」ブリューナが鉄槌を振り下ろす。轟音とともに火花が散り、剣と盾が同時に光を放つ。その光は互いに呼応し合い、一体であるかのように脈動していた。
ファエリアが魔力を流し込み、仕上げの刻印を結ぶ。ミナが最後の調整を終えると、炉の中から二つの輝きが浮かび上がった。
一本の剣と、一枚の盾。銀白の光を纏い、夜明けを告げるように輝いている。
「――完成だ!」ブリューナが叫んだ。
アルトが一歩前へ出る。震える手で剣を取り、盾を腕に掲げた瞬間、光が爆ぜ、洞窟全体を照らした。
名が刻まれる。《黎剣セラフィード》。
剣は柔らかな光を宿し、盾は堅牢な輝きを放つ。二つはまるで一対の翼のようにアルトを包み込み、その姿は仲間の守護者そのものだった。
「これが……俺の力……!」アルトの瞳に強い光が宿る。
◇
庭では待機組が歓声を上げた。アマネが駆け寄り、にやりと笑う。「やっと完成だな、アルト!」
ジークが腕を組み、大声で笑った。「剣も盾も背負うとか、さすが真面目坊主だ!」
リュシアが優しく頷き、ルミナリアを掲げた。「あなたが守ってくれるなら、私は心から魔法を放てるわ」
カイルも聖典を抱きしめながら微笑んだ。「僕らを導く光だね、アルト」
エリスティアは弓を携え、静かに言葉を添えた。「あなたの決意が、この国を強くするでしょう」
アルトは仲間一人ひとりを見渡し、深く頷いた。「必ず……皆を守り抜く!」
黎剣セラフィードが光を放ち、その輝きは仲間たちの心に確かな希望を刻みつけた。
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