武器の骨格
全員の適性確認が終わった広間には、静かな余韻が残っていた。星映水晶の光は収まり、ただ淡い輝きを宿すのみとなっている。仲間たちは互いに顔を見合わせ、それぞれの結果を胸に刻み込んでいた。
「……なるほどな」ブリューナが低く唸り、腕を組む。「どいつもこいつも、はっきりとした個性が出た。これなら骨格から作り込める」
ファエリアが水晶の側で淡く微笑む。「刻印や流路の下地も整えられます。ただし、加護を完全に宿すには、皆さん自身がさらに歩みを進める必要があります」
アマネは頷き、剣の柄を確かめるように撫でた。「まだ道の途中ってことね。でも……進む方向が見えた気がする」
リュシアは胸の前で杖を抱き、穏やかに微笑んだ。「この光を忘れなければ、迷わずにすみそうです」
アルトは静かに拳を握る。「守り抜く力を、もっと鍛えよう」
ジークは笑みを浮かべ、肩を回した。「燃やすだけじゃなく、制御も覚えねえとな」
カイルは祈るように錫杖を掲げた。「風は、私に癒やす力を示してくれました。仲間を支えるために、学びを深めます」
エリスティアは膝をつき、深く頭を垂れる。「フローラ様に仕える矢として、この力を磨きます」
ミナは頬を紅潮させながら、ファエリアへと身を乗り出した。「私……弟子入りさせてください! 魔導技師として、もっと学びたいです!」
ブリューナが豪快に笑う。「気合いは十分だな。だが口だけじゃ務まらん。炉の熱と金床の音に耐えられるかどうか、見せてもらおう」
ファエリアも頷く。「知識を形にするには、必ず試練が伴います。それでも進む覚悟があるのなら、歓迎しましょう」
ミナは勢いよく頭を下げた。「はい!」
◇
ブリューナは炉の火をかき立て、鉱石の欠片を持ち上げた。「骨格には黒耀鋼、強度には黎明鉱。星映水晶の欠片を核に据え、各々の適性に合わせた武器を鍛える。だが、完成までは時間がかかるぞ」
ファエリアは机に広げた羊皮紙に、精緻な線を描き込んでいく。光の刻印が浮かび、流路の設計図が淡く輝いた。「これは下地にすぎません。けれど、今日の儀式で見えた光は確かに形を持ち始めています」
アマネは仲間たちを見渡した。皆の瞳には不安と同じだけの希望が宿っていた。道は険しい。だが共に歩めば越えられると、今は信じられる。
「――みんなで、必ず前に進もう」
その言葉に、仲間たちは一斉に頷いた。炉の火が高く燃え上がり、新たな武器の誕生を予感させるように広間を照らした。
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