二手の道
謁見を終えた勇者一行は、重苦しい空気を抱えたまま王城を後にした。夜の帳が降り、城門を抜けると冷たい風が頬を撫でる。誰もが心に迷いを抱えながらも、その歩みは止まらなかった。
「フローラ様の様子も気になるし、ギルドのことも見ておきたいね」アマネが少し肩を回しながら言った。「どう分かれるか、考えないと」
リュシアは深く頷き、アルトも剣の柄に手を置いたまま言葉を継ぐ。「俺たちはフローラ様のもとへ向かおう。クラリスとユリウスからの報せもあるし、ルナリア王妃のエリスティア様も同行されるのが自然だ」
エリスティアは静かに頷いた。その瞳には王国の未来を案じる真摯さが宿っていた。「彼女が無事であるなら、ルナリア王国にとっても大きな支えとなるでしょう。すぐに向かいましょう」
その様子を見てジークが腕を組む。「じゃあ俺とミナはギルドだな。不在の間にどれだけ回ってるか、確かめておく」
ミナは端末を抱え、やや緊張した面持ちで言った。「でも……ジーク、私たちが全部抱える必要はないよ。ランドルフやダリオ、それにセリーヌやトーマもいる。任せてみたら、きっと大丈夫」
ジークは少し間を置き、ふっと笑った。「……そうだな。任せるのも大事だ」
こうして彼らは二手に分かれることを決断した。アマネ、リュシア、アルト、エリスティアはフローラのもとへ。ジークとミナはギルドへ。分かれ道の先に待つものは不安ばかりだったが、それでも彼らは進むしかなかった。胸に灯ったのは、互いを信じるという確かな意志だった。
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