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封印の揺らぎ—魔王胎動

瘴気の柱が爆ぜた。

空間そのものが軋むような音とともに、封印地の大地が裂け、黒い裂け目が広がっていく。

「……っ」

アマネが思わず息を呑む。刀を握る手が汗ばんだ。

裂け目から現れたのは、まだ人の姿に近い影。だが輪郭は歪み、幾重もの瘴気がまとわりついている。

声はなかった。ただ、低い唸り声と大気を押し潰すような「圧」だけが辺りを満たした。

「これが……魔王……?」リュシアが呟き、杖を構える。その声は震えていた。

六人は一斉に迎撃の態勢を取る。しかし影が動いただけで、全身に針を突き立てられたような苦痛が走る。

「近づけねぇ……!」ジークが歯を食いしばる。剣を振るっても、瘴気の奔流に打ち消される。

アルトの突撃も、ミナの仕掛けも、ただ霧散するだけだった。

その時、地鳴りが走った。

封印地の左右から三つの影が歩み出る。

「我らが主、ついに胎動せり」

低い声が響き、六人の目に異形が映った。

•大地を揺らす巨体、岩獣の鎧を纏った バロル・グラウス。

•炎を纏い、狂気に笑う ザガン・ルシフェル。

•凍てつく冷気を撒き散らす モラクス・ディアス。

「四天王……!」カイルが息を呑んだ。

バロルが拳を振り下ろすと、大地が抉れて六人の足元が割れる。

ザガンが炎を撒き散らし、戦場全体を炎の檻で覆った。

モラクスが冷気を吐き出し、凍りついた地面が六人の退路を断った。

「貴様らの足掻き、もはや意味をなさぬ」モラクスの冷酷な声が響く。

「まだ時は満ちておらぬ」バロルが唸る。「主は完全ではない。今は眠りの地へ戻るのみ」

「だが――次に相まみえる時、世界は灰と氷に沈むだろう」ザガンが狂気に笑った。

魔王の影が、四天王に守られるようにして瘴気の裂け目を進み出る。

黒い影がルナリア城の方向を向いた瞬間、六人の全身が硬直する。

言葉すら持たぬ存在の視線が、魂を削るようだった。

「待てっ!」アマネが刀を振りかざし、光を奔らせる。

だが炎と氷の壁が同時に迫り、刀身は遮られる。

「くそっ……!」ジークが剣を叩きつける。

「まだ、力が足りない……!」アルトが歯を食いしばった。

結界のように広がる炎と氷、そして岩の壁が六人を押し返す。

光は届かず、ただ瘴気の波動だけが残された。

魔王の影と四天王は、やがて黒雲の中へと消えた。

残されたのは、荒れ果てた封印地と、崩れ落ちる大地の呻きだけだった。

「……行ってしまった」リュシアが小さく息を吐いた。

アマネは刀を握り直し、仲間たちを見渡す。

全員が傷つき、疲弊していた。だがその瞳だけは、揺らがなかった。

「必ず……終わらせる」

少女の声が、崩壊しかけた大地に響く。

六人は互いの影を確かめ合いながら、静かに立ち上がった。


学生編→社会人編を経て、ここから魔王戦線へ。引き続き応援よろしくお願いします!


お読みいただきありがとうございます。いけるところまで連続投稿!(不定期ですが毎日目標)。

面白かったらブクマ&感想で応援いただけると嬉しいです。


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