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黎明衝破—未完成の輝き

六人の心が一つに重なった瞬間、戦場の空気が変わった。

それぞれの手に宿る光が線となって繋がり、ひとつの輪郭を描き始める。

「これが……俺たちの力……」アルトが震える声で呟く。

「いや、まだ途中だ。けど――今なら届く!」ジークが吠える。

アマネは刀を握りしめ、リュシアと視線を合わせた。

二人の間に流れる呼吸が、さらに仲間へと波紋のように広がっていく。

「行こう!」

「うん!」

刀が振り下ろされる。

杖が掲げられる。

剣が閃き、拳が唸り、祈りと光が混じり合う。

六人の想いが一点に収束し――

「――《黎明衝破》!」

未完成ながら奔り出した光の奔流が、戦場を覆った。

星々の輝きを束ねたような矢が、天から降り注ぐ。

怪物の甲殻を砕き、胸を貫き、瘴気を浄化する波が全身を駆け巡った。

「ぐ……あああああああ!」

宰相と教皇の声が重なり、絶叫となって響き渡る。

闇が剥がれ落ち、人の形が一瞬だけ浮かび上がった。

憔悴しきった顔――その奥に、人としての輪郭がまだ残っていた。

「まだ……戻れる……!」リュシアの声に、カイルの祈りが重なる。

「人よ、選べ。欲望か、それとも……!」

だが返ってきたのは、悔恨ではなく――なおも狂気に満ちた瞳だった。

「我らは……不滅を……!」

最後の執念が瘴気を呼び戻し、浄化しかけた身体を黒に染め直す。

爆発のような衝撃が走り、六人は大きく弾き飛ばされた。

地面に叩きつけられたアマネが、必死に刀を突き立てて立ち上がる。

「……やっぱり……」息を荒げながら呟く。「未完成じゃ……届かなかった……」

「でも……確かに効いてた!」ジークが立ち上がる。「あいつら、一瞬……人の顔に戻った!」

「そうだ」アルトが剣を支えにしながら続ける。「完全に勝てなかった。でも……道は見えた」

六人は互いに視線を交わす。

その瞬間、足元の大地が大きく揺れた。

「……封印が……!」リュシアの顔から血の気が引いた。

瘴気の柱が唸りを上げ、封印の紋が裂けるように光を走らせる。

「やばい……こいつら、封印の揺らぎに……!」ミナが叫ぶ。

宰相と教皇の身体が、裂け目から噴き出す瘴気に吸い込まれるように沈んでいく。

抵抗することもなく、いや、むしろ悦びすら浮かべて――。

「見よ……これこそ……不滅の……!」

二人の声は瘴気に溶け、やがて異形の影に飲み込まれていった。

「……取り込まれた……」カイルが低く呟く。

六人は立ち尽くした。

確かに宰相と教皇は倒した。

だが、その魂は魔王の封印へと吸い込まれていったのだ。

「これで……終わりじゃない」アマネが唇を噛み、仲間を振り返る。

「まだ……本当の戦いが始まってすらいない」

封印の光は脈打ち、闇を孕んだ胎動を響かせていた。

六人の影は、その光に向かって再び立ち上がる。


お読みいただきありがとうございます。いけるところまで連続投稿!(不定期ですが毎日目標)。

面白かったらブクマ&感想で応援いただけると嬉しいです。


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