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不滅の代償

宰相と教皇の身体から噴き出す瘴気は、六人が放った光の余韻を嘲笑うかのように膨れ上がっていった。

「まだ立ち上がるのかよ……!」ジークが汗をぬぐい、剣を構える。

「いや、これは……」カイルが険しい顔で呟いた。「もはや、人が耐えられる領域じゃない」

宰相はよろめきながらも、血に濡れた唇で笑った。

「人の限界を……超えるのだ……!」

教皇もまた、焼けただれた腕を広げ、狂気に染まった声を上げる。

「永遠に朽ちぬ器となる! そのためならば、魂すら……!」

「やめろ!」リュシアが必死に叫び、杖を掲げた。

だが二人の耳には届かない。

瘴気が渦を巻き、二人の身体を絡め取る。

黒い糸は互いの肉体を引き寄せ、血と骨を軋ませながら融合を始めた。

「く……っ!」アマネが刀を振り下ろし、渦を断とうとする。

だが刀身は押し返され、火花のような瘴気が迸る。

「止まらない……!」アルトが歯を食いしばり、仲間を庇うように立った。

「俺たちの力じゃ、もう……!」

「見よ……!」宰相と教皇の声が重なり合い、もはや誰のものとも判別できなくなる。

「不滅の存在を!」

肉が裂け、骨が軋み、甲殻に覆われた異形の腕が伸びた。

顔は崩れ、二つの眼が一つの仮面に収束していく。

血のように赤い瘴気が口から吹き出し、封印地を赤黒く染め上げた。

六人は言葉を失った。

それはもはや宰相でも教皇でもなく、人ですらなかった。

「……化け物だ」ジークが低く呟く。

「でも――止めなきゃ」アマネが前に出る。

小柄な背中に、刀を握る手に、仲間は再び力を取り戻した。

「逃げても、後戻りしても……こいつらは追ってくる。だったらここで!」リュシアが隣に立ち、杖を輝かせる。

六人は互いに視線を交わした。

怯えも迷いもある。だが、決して退かない心だけは共鳴していた。

「行くぞ!」アマネの声に、全員が頷いた。

瘴気の渦から生まれ落ちた巨体が、低い咆哮をあげた。

人の欲望が作り上げた、意志を持たぬ怪物。

封印地を揺るがす戦いはまだ終わらない。


お読みいただきありがとうございます。いけるところまで連続投稿!(不定期ですが毎日目標)。

面白かったらブクマ&感想で応援いただけると嬉しいです。


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