不滅の怪物
宰相と教皇はなお人の姿を保ちながら、狂気の炎を瞳に宿し、六人へと襲いかかった。剣と祈りが交錯し、戦場は光と闇の奔流に包まれる。
「まだだ……まだ呼び戻せる!」カイルが声を張り上げ、祈りを込めて光を放つ。だが、二人の身体はその光を拒むかのように震え、黒い瘴気がさらに濃く立ち昇った。
「くだらぬ情け!」宰相の声はもはや濁音に変わり、響くたびに大地が軋む。
「不滅こそ我らの祈り!」教皇の叫びは狂気に満ち、闇の炎が空を焦がした。
六人の必死の抵抗も虚しく、二人の身体から瘴気の糸が噴き出す。それは互いを絡め取り、鎖のように締め上げ、次第に人の輪郭を失わせていく。
「やめろ!」アマネが駆け出す。しかし、 《星映刀》 の輝きすら、絡み合う瘴気に弾かれて届かない。
「戻ってください!」リュシアの祈りも、深い闇に呑み込まれるだけだった。
黒い渦が爆ぜ、耳を裂く轟音が封印地に響いた。宰相と教皇の声は混じり合い、やがて言葉すらも意味を持たなくなる。残ったのは、飢えと欲望のうめきだけ。
甲殻が生え、骨が軋む音と共に巨体が姿を現す。鋭い刃のような腕、無数の眼孔、うねる瘴気の翼。人であった証は、もはやどこにもなかった。
「……これが、不滅を望んだ末路……」アルトが息を呑む。
「なら、俺たちが止めるしかねぇ!」ジークが剣を振り上げ、声を張り上げる。
「行こう!」アマネが叫ぶ。その声に、リュシア、カイル、ミナ、アルト、ジークが応えるように駆け出す。
六人の視線が交わり、一つの決意がそこに宿った。
瘴気の奔流に立ち塞がるのは、もはや人ではない「不滅の怪物」。
次なる総力戦が、幕を開ける。
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