封印地が視界に—戦場の地平
午後、彼らの目に異様な光景が飛び込んできた。遠くに黒い霧の柱が天へと伸び、空を覆い尽くすように広がっている。瘴気の根源――魔王の封印地が近いと悟る。
「……あれが」
リュシアが杖を握りしめ、低く呟いた。アマネも刀の柄に手を添え、真剣な眼差しを向ける。
進むほどに戦況は激化する。魔物だけでなく、依代化した亜人が混ざり始め、戦場は混乱を極めていた。人間の形を保ちながら、瘴気の糸に絡め取られた者たちが獣のように暴れ回る。
「くそっ、どっちが魔物だか分かんねぇ!」
ジークが叫び、剣で迫る敵を弾き返す。だが、その目には苦悩が浮かんでいた。
「見捨てるわけにはいかない!」
リュシアが声を張り上げ、光の結界を展開する。だが数は多く、押し返すには限界がある。
カイルが懸命に護符を使い、光の乱れで依代か否かを判別する。彼の祈りに応じ、わずかに黒ずむ者を隔離し、救えそうな者だけを狙うよう指示を飛ばす。
「右はまだ戻れる! 左は……駄目だ、下がれ!」
ミナは即座に手製の閃光球を投げ込み、仲間の退路を作った。爆音と光に紛れて、六人は必死に戦場を突破していく。
だが、その先に影が立ちはだかる。黒い甲殻に覆われ、腕は鋭い刃のように変じた巨躯の魔物。周囲の瘴気を吸い込みながら膨張し、咆哮が大地を震わせる。
「……これまでとは格が違う」
アルトが低く呟いた。仲間たちは武器を構え直し、迫る脅威に備える。封印地は目の前。しかし、その道は血と光で切り拓かねばならなかった。
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