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祈りの継承—聖女から導師へ

戦いの余韻がまだ胸に残る。焚き火の明かりに照らされた野営地で、六人は静かに傷を癒していた。遠くで夜鳥が鳴き、風が枝を揺らす音が耳に届く。

「……やっぱり、あの時の光は本物だった」

リュシアが掌に杖を抱き寄せ、火の揺らぎを映す瞳で言った。

その言葉に応えるように、カイルが深く息を吸い、両手を組んで祈りの形をとる。瞼を閉じ、心を澄ませると――焚き火の炎が一瞬だけ柔らかく広がり、仲間の顔を明るく包み込んだ。

「……今のは」

アルトが目を細め、驚きを隠せない。

「僕は、ただ願っただけです。みんなが無事であるようにって」

カイルは少し照れたように視線を落とした。

リュシアはそっと微笑んだ。「それでいいの。力は形じゃなくて、心から溢れるものだから」

そのやり取りを見ていたミナが、頬を膨らませながら呟く。「……私、発明ばっかりに頼ってたのかも。札とか道具とか……便利だけど、それだけじゃ足りないんだね」

リュシアが首を横に振る。「いいえ。あなたの工夫はみんなを救ってきた。でも――もし心の光を重ねられたら、もっと強くなれる」

ミナは手のひらを見つめ、小さく握りしめた。「……今は作るものもない。でも、気持ちならここでだって重ねられる。私も、光を届けたい」

焚き火がぱちりと弾ける。夜空の星々は彼らを見守るように瞬いていた。誰もが胸の奥で、勇者と聖女に寄り添うだけではなく、自分自身の光を放つ時が来ていることを感じ始めていた。

その芽吹きが、やがて六人をひとつの輝きへと導いていく――。


お読みいただきありがとうございます。いけるところまで連続投稿!(不定期ですが毎日目標)。

面白かったらブクマ&感想で応援いただけると嬉しいです。


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