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伝わる刃—勇者から戦友へ

戦場の熱気はまだ冷めきっていなかった。瘴気の残り香が漂う谷間で、六人はそれぞれに傷を負いながらも立っていた。ネビロスを退けたものの、その影は胸に焼き付いている。

「……あの時、確かに光が重なった」

リュシアが杖を見つめ、かすかに呟いた。

「でも、まだ未完成だったな」アルトが息を吐く。「押し返しただけだ。次は……確実に倒さなきゃならない」

アマネは刀を地に突き、肩で息をしながら周囲を見渡した。瞼の奥に、戦いの最中に走った“光の共鳴”の感覚が残っている。

――あの時、みんなと気持ちが繋がった。

でも、完全じゃない。もっと深く踏み込めるはず。

視線の先で、ジークが黙って剣を拭っていた。普段なら声を荒げる彼が、珍しく言葉を探している。

「……ジーク」

アマネが歩み寄る。その声にジークが顔を上げた。

「さっき……自分の剣じゃ斬れないって言ってたでしょ」 「……ああ」ジークは苦笑する。「結局、俺はお前の補佐でしかないのかって、思っちまった」

アマネは首を振った。 《星映刀》が月光を反射し、淡く光を散らす。

「違うよ。あの時、ジークの剣がなかったら……私は光を繋げられなかった」

ジークの目が驚きに見開かれる。

「あなたの剣筋が、道を開いた。だから私の一閃は通じたんだ」

アマネの言葉は、迷いなく響いていた。あの瞬間を共有した者にしか分からない確信。ジークは拳を握り、胸の奥に熱を感じる。

「……マジで言ってんのか」

「うん。私一人じゃ足りない。勇者って肩書きがあっても……仲間がいなきゃ、希望は形にならない」

その瞬間、ジークの胸に走った感覚があった。刃と刃が響き合うような共鳴。 《星映刀》から溢れる光が、彼の剣に薄くまとわりついた。

「これは……」

ジークが剣を構えると、刀身が淡く輝きを帯びる。瘴気に汚れた岩壁へ一閃。刃は確かに瘴気を断ち、黒い糸が弾け飛んだ。

「斬れた……!」

アマネが頷く。「ほらね。勇者じゃなくても、できるんだよ」

ジークは剣を見つめ、そして照れ隠しのように笑った。

「……くそ、やっぱりお前はずるいな。そんな風に言われたら、もう迷えねぇじゃねえか」

アマネも微笑む。二人の間に、言葉以上の確かな絆が芽吹いていた。

その様子を遠くで見ていたアルトが小さく呟く。 「……勇者と聖女だけじゃない。俺たち全員が……光になる」

夜風が瘴気を吹き払い、星空が顔を覗かせた。六人の旅路はまだ続く。しかし、その刃は確かに伝わり始めていた。


お読みいただきありがとうございます。いけるところまで連続投稿!(不定期ですが毎日目標)。

面白かったらブクマ&感想で応援いただけると嬉しいです。


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