追い詰められる六人
谷間を埋め尽くす瘴気と、押し寄せる魔物と依代化の亜人たち。六人は背中合わせになり、必死に剣と魔法を振るっていた。
「くそっ……!」ジークの剣が大きな獣を切り伏せるが、すぐに二体、三体と新たな影が迫る。「きりがねぇ!」
「下がって!」リュシアが杖を振るい、光の壁を張る。だが、次々に突き破られ、彼女の額には汗が滲んでいた。
アルトは冷静に戦況を見渡し、剣で仲間への攻撃を弾きながら叫ぶ。「防ぎきれないぞ! 前に出るな、形を崩すな!」
「わかってる!」ミナは腰の小型魔導具を起動させ、閃光弾を放つ。炸裂する光が魔物の群れを弾くが、焼け石に水だった。
◇
「どうした、勇者」
谷間の奥でネビロスが手を広げ、楽しげに笑う。「仲間と群れても、結局は押し潰される。勇者と聖女だけでは足りぬと、まだ気づかぬか?」
その嘲笑が、六人の胸に重くのしかかる。
アマネは 《星映刀》を握りしめ、牙を剥く魔物に斬り込む。星の光が軌跡を描き、数体をなぎ払うが、すぐに次の波が押し寄せてきた。
「はぁ、はぁっ……!」胸を上下させ、彼女の瞳には焦燥が浮かぶ。「このままじゃ……!」
◇
その時――
カイルが膝をつき、胸に手を当てた。震える声が、祈りとなって戦場に広がる。
「どうか……この者たちに帰る道を……!」
光が、彼の周囲に立ち上がった。白い輝きが瘴気を一瞬だけ払い、依代化していた亜人の目がわずかに澄んだ。
「……あ……俺は……?」
苦しげに呻くその声に、六人の心が揺れる。確かに、まだ救えるのだ――その証が、そこにあった。
◇
「ほう……」ネビロスの笑みが仮面の奥で深まる。「祈りひとつで糸を解すか。面白い……だが、それがいつまで続くかな?」
再び瘴気が渦を巻き、正気を取り戻しかけた亜人が苦悶の声をあげる。
アマネは刀を構え直し、仲間に声を張り上げた。「みんな――信じて! まだ、あの人たちは戻れる!」
六人の胸に、光が差し込む。追い詰められてなお、戦う理由を示す光が。
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