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混沌の戦場—ネビロスの影

荒れ果てたルナリアの大地。封印地へ続く谷間に、瘴気が濃く漂っていた。

アマネたちが足を踏み入れた瞬間、地を割って魔物が這い出す。牙を剥く獣、羽音を響かせる異形……その群れの中に、亜人の姿が混じっていた。

「……っ!」リュシアが杖を握りしめる。「あれは……魔物じゃない!」

狼耳を持つ青年、狐人の少女。顔には苦悶が浮かび、しかし瞳は濁り、瘴気に操られている。肉体は半ば魔物へと変じ、鋭い爪や角が突き出していた。

「依代化した亜人……!」カイルの声が震える。「見分けが……つかない……」

「どっちだ!?」

ジークが剣を振るい、迫る影を弾く。だが次の瞬間、彼の刃は人の肩をかすめ、赤い血が飛んだ。

「くそっ……! 俺の剣じゃ、瘴気の糸は斬れねえのか!」

「ジーク!」アルトが叫ぶ。「退け! 無闇に斬れば……!」

だが敵は容赦なく襲い来る。魔物と依代化の亜人が混じり合い、混沌は極まった。

「ふふ……実に美しい光景だ」

谷間の奥、瘴気の渦の中から、一人の影が現れる。

長衣をまとい、仮面の奥から笑みを漏らす男。四天王のひとり――ネビロス・ヴェイル。

「欲望に抗おうと足掻く者……欲望に飲まれ、糸に絡まる者……どちらもまた、我らの糧にすぎぬ」

彼の指が軽く振られると、苦悶の亜人たちが呻き声を上げ、一斉に突進してきた。

「……!」リュシアの目が揺れる。「救いたい……でも、こんな数……!」

カイルが歯を食いしばる。「術式はまだ未完成だ……間に合わない……」

アマネは刀を構えた。 《星映刀》が淡い光を放つ。だが彼女の瞳には迷いがあった。

「斬るしかない……でも、それじゃあ……」

「甘いな、勇者」

ネビロスの声が谷に響き渡る。「お前がいかに澄んだ心を持とうと……その手がお前の希望を斬り裂く。やがてお前自身が絶望の依代となろう」

嘲笑が瘴気と混ざり、戦場を覆った。だが、アマネはゆっくりと息を吐く。

「……そんな未来、私が斬り開く」

《星映刀》が、星の粒子を散らしながら閃いた。


お読みいただきありがとうございます。いけるところまで連続投稿!(不定期ですが毎日目標)。

面白かったらブクマ&感想で応援いただけると嬉しいです。


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