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光の矢、竜の咆哮

峡谷を覆う瘴気が、黒い嵐のように渦巻いていた。

その中心で、大司教が杖を掲げ、狂気の笑みを浮かべる。

「見よ! これこそが真の救済だ! 弱き魂は魔に抱かれて生まれ変わる!」

「救済だと……?」

フローラの琥珀の瞳が怒りに燃える。

「それはただの蹂躙! 私たちの民を弄ぶな!」

彼女の背に、竜の紋様が光を放つ。

血が滾り、息が荒くなるのも構わず、竜の咆哮を解き放った。

轟音と共に炎が奔流となり、瘴気を焼き払う。

一瞬だけ、夜空に月光が戻った。

「フローラ様が開いた道を無駄にはしない!」

クラリスが剣を掲げ、亜人たちを鼓舞する。

「突撃!」

ランドルフが先陣を切り、巨体を生かした斬撃で魔物を弾き飛ばす。

「行くぞォッ!」

ユウマとレナが後方で魔法を放ち、仲間を援護する。

炎と光の矢が飛び交い、戦場が一瞬ごとに揺らいだ。

「精霊よ……力を!」

エリスティアが祈るように弓を引く。

矢が放たれ、白銀の光となって宙を裂いた。

〈精霊矢〉――命中した瞬間、瘴気が祓われ、魔物の瞳が澄んで消えていく。

「次だ……!」

彼女は矢を重ね、今度は群れに狙いを定めた。

「〈星環射〉!」

放たれた矢は空で弧を描き、光の輪となって拡散。

複数の黒糸を一斉に断ち切り、依代の兆候を見せた兵を救った。

「……っ」

兵士が膝をつきながらも涙を流し、エリスティアを仰ぎ見た。

「ありがとう……まだ、戦える……!」

その声が仲間たちを奮い立たせる。

「馬鹿な……人の意志が、瘴気を拒むだと?」

大司教の顔に初めて動揺が走る。

「お前が見落としているのはそこだ」

ユリウスが冷静に言葉を投げる。

「人はただ弱いだけじゃない。支え合い、選び取る力を持っている」

「戯言を!」

大司教が杖を振り下ろし、漆黒の瘴気が奔流となって迫る。

「……退かない!」

エリスティアが弓を握り締める。

その瞬間、背後からフローラの声が重なった。

「一緒に!」

竜の咆哮と、精霊の矢。

二つの力が交わり、巨大な光の奔流となって瘴気を切り裂いた。

轟音と共に、峡谷の闇が一気に吹き飛んでいく。

大司教の黒衣が裂け、顔に焦りが滲んだ。

「馬鹿な……これほどの光……!」

エリスティアは弓を下ろし、息を荒げながらも瞳を輝かせた。

「まだ……終わってない。ここで、決着をつける!」

フローラが頷く。

「私たちが民の旗になる。――必ず!」

二人の背に、仲間たちの声が続いた。

クラリス、ユリウス、ランドルフ、そして数多の亜人たち。

その光景は、まるで「共生の未来」そのものだった。

闇と光が再びぶつかり合う。

峡谷は戦場と化し――

いよいよ、大司教との決戦の幕が上がった。


お読みいただきありがとうございます。いけるところまで連続投稿!(不定期ですが毎日目標)。

面白かったらブクマ&感想で応援いただけると嬉しいです。


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