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邂逅—弓と竜の誓い

森を覆う瘴気の中、魔物たちが牙を剥いて押し寄せてくる。

黒毛の狼、棘を生やした猪、異形に歪んだ鳥――数は十を超え、赤い瞳が闇に揺れた。

「フィオナ、下がって!」

リディアが叫び、剣を振るう。鋭い一閃が狼を裂き、血煙が散った。

だが数は減らない。

フローラは杖を握りしめ、肩の鱗を光らせる。

息は乱れていたが、その瞳には決意の炎が宿っていた。

「……私が道を切り拓く!」

彼女の背から竜の紋様が浮かび上がり、赤金の光が走った。

咆哮と共に、爆ぜるような熱波が群れを吹き飛ばす。

その瞬間――

「――〈精霊矢〉!」

森の奥から、白光の矢が飛来し、魔物の瘴気を切り裂いた。

狼の眼が澄み、一瞬だけ苦悶に揺らいでから倒れる。

「この光は……!」

フローラが目を見開いた。

月明かりの中、弓を構える少女の姿が現れた。

銀髪を揺らし、紅の瞳に力強い光を宿す――エリスティア。

彼女の背後には、クラリスとユリウス、ランドルフ、レナ、ユウマ、そして亜人の戦士たち。

一糸乱れぬ布陣で森を駆け抜けてきた。

「フローラ様!」

エリスティアの声が、夜を震わせる。

フローラの瞳に、熱いものが込み上げた。

「……エリスティア!」

戦場は一変した。

ランドルフが雄叫びを上げ、大剣で猪を叩き伏せる。

「おらぁ! 獣の群れごとき、まとめて相手してやる!」

ユウマとレナは背後を固め、治癒と援護魔法で陣を支える。

クラリスは鋭い指揮で戦線をまとめ、ユリウスが即座に次の布陣を指示した。

「敵の中心は瘴気の杭! そこを叩けば群れは散る!」

「了解!」

エリスティアが弓を引き絞り、矢を放つ。

精霊の光が杭を貫き、魔物たちの動きが一瞬鈍った。

フローラはその隙に、竜の血を呼び覚ます。

紅蓮の炎が舞い、残る魔物を焼き払った。

静寂が戻る。

瘴気の杭は崩れ、魔物の群れは霧散していった。

フローラは肩で息をしながら、駆け寄ってきたエリスティアを見つめた。

「……あなたが、ここまで来てくれたのね」

エリスティアは深く頷き、跪いた。

「フローラ様。私は……民の代表としてここに立っています。

でも、私にとってあなたは、それ以上の存在です」

紅の瞳に涙が滲んでいた。

フローラはその手を取り、強く握った。

「もう、私たちは一人じゃない。あなたと共に、この国を取り戻す」

二人の瞳が交わり、月光の下で誓いが結ばれる。

その姿は、絶望の闇に差し込む灯火のようだった。

クラリスが微笑みながら声を上げた。

「誓いは果たされたわ。さあ、次は大司教を討つ番よ」

ユリウスが冷静に頷き、地図を広げる。

「拠点はこの先の峡谷だ。奴らが瘴気を増幅させている源……そこを叩けば、ルナリアの民は再び息をつける」

エリスティアとフローラは互いに手を握ったまま、前を見据えた。

「進みましょう」

「ええ――必ず勝つ」

月下の誓いは、国を照らす未来への第一歩となった。


お読みいただきありがとうございます。いけるところまで連続投稿!(不定期ですが毎日目標)。

面白かったらブクマ&感想で応援いただけると嬉しいです。


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