表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

297/471

出立—二つの道

野営地の中央に置かれた大きな卓上地図を、カイルが指先でなぞった。

「ここが国境の無属地。魔王の封印痕がある地点だ。僕たち勇者隊は、このルートを通って調査に向かう」

彼の声は落ち着いていたが、その眼差しは鋭かった。

リュシアが隣で頷き、補足する。

「封印の揺らぎを確認し、宰相や教皇が潜んでいれば必ず止めなければならないわ」

「そしてもう一方――」

カイルの視線がエリスティアに移る。

彼女は一歩前へ出て、弓を胸に抱いた。

「私たちはルナリア王城へ向かいます。フローラ様を必ず救い出す」

その言葉に、クラリスが優雅に頷いた。

「奏の会としても全力で支援します。アマネを導くように、フローラ様をも――」

「僕も一緒に」

ユリウスが声を重ねた。

彼の背筋は真っ直ぐに伸び、いつになく毅然としている。

「父の影に囚われるのは、もう終わりです。僕自身の意思で、仲間と歩む」

ランドルフやレナ、ユウマらも武具を鳴らし、短く気勢を上げた。

エリスティア部隊の覚悟は、すでに揺るぎないものとなっていた。

その場で、ミナが小さな箱を取り出した。

「はい、これ忘れないでね」

掌に収まる黒い通信機。

魔力で声を伝える仕組みで、すでに六人とエリスティアが持っている。

「何かあったら、必ずこれでやり取りすること。特に……レオン殿下に変化があれば、即座に報告して」

彼女の声にはいつものおどけがなく、真剣な響きがあった。

「わかった。必ず守る」

アマネが受け取り、仲間全員を見渡す。

「離れていても、私たちは繋がってる。絶対に一人じゃない」

「ええ」

リュシアも柔らかく微笑み、手を重ねる。

「声が届く限り、心も届くわ」

エリスティアは新たな弓を握り、静かに宣言した。

「必ず、フローラ様を救い、戻ります。そして……この国を共に支えてみせます」

出立の刻。

勇者隊は北東の荒野へ、エリスティア隊は城塞のある西方へ。

焚火の煙が二筋に分かれるように、彼らの背中もそれぞれの道へと歩み出した。

その道は再び交わるのか、あるいは――。

だが今はただ、各々の胸に刻んだ誓いが、確かな光となっていた。


お読みいただきありがとうございます。いけるところまで連続投稿!(不定期ですが毎日目標)。

面白かったらブクマ&感想で応援いただけると嬉しいです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ