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荒地の試射—仲間の証明

東の空がわずかに白み始めた頃、三人は野営地から少し離れた荒地へと足を運んでいた。

草木もほとんど生えない、岩と砂利の広がる地帯。魔物の影もなく、試射にはうってつけの場所だった。

「さあ、試してみよっか」

アマネが軽く肩を回しながら振り返る。

背には 《星映刀》。だが彼女の視線は、エリスティアの手にある新たな弓へと注がれていた。

「……はい」

エリスティアは深く息を吸い込み、弓を握り直した。

木肌はすでに光を帯び、まるで生きているかのように脈動している。

「私が結界を張るわ。安心して撃ちなさい」

リュシアが杖を掲げると、淡い光の半球が周囲を包み込んだ。

柔らかな光律聖陣。その中心で、エリスティアは弦を引き絞る。

「まずは……」

彼女の囁きに応じるように、矢が形を成した。

炎でも氷でもない、精霊の澄んだ光そのもの――。

「――精霊矢!」

放たれた矢は直線を走り、遠くの岩を貫いた瞬間、白い光の波紋が広がった。

重く淀んでいた空気が一瞬、清らかに澄み渡る。

「……すごい」

リュシアが思わず呟く。

アマネも目を細め、頷いた。

「瘴気を祓うだけじゃない。心にまで届く光だね」

エリスティアは胸に手を当て、小さく息を吐いた。

「確かに感じます……精霊が、私の願いを矢に乗せてくれている」

続いて、彼女はもう一本矢を番える。

今度は三本の光が同時に形を取り、弦を離れると輪を描くように回転した。

「――星環射!」

三つの矢は空中で光の環に変わり、複数の方向へ伸びる見えない糸を断ち切るように飛び散った。

荒地に漂っていた薄い瘴気の残滓が、まるで霧が晴れるように消えていく。

「複数を……同時に」

リュシアが息を呑む。

アマネは満足そうに笑った。

「これなら小規模の依代化くらい、一人で止められる」

エリスティアは矢を収め、そっと弓を見下ろした。

「……フローラ様を救うための力。精霊が、本当に私に託してくださった」

最後に、三人は互いに目を合わせる。

リュシアが杖を構え、アマネが刀を抜き、エリスティアが弦を引いた。

「じゃあ、私たちも合わせてみようか」

アマネの声に、二人が頷く。

三つの光が同時に解き放たれ、空中で交わった瞬間、まばゆい奔流が荒地全体を照らした。

「――黎明衝波!」

夜の名残を切り裂くように、黄金の光が広がっていく。

岩は砕け、瘴気は浄化され、大地に新しい朝が訪れたかのようだった。

光が収まると、三人はしばし立ち尽くしていた。

やがてアマネが刀を収め、にっと笑う。

「これなら安心して任せられる」

「ええ。あなたなら……フローラを守れるわ」

リュシアの言葉に、エリスティアの瞳が揺れる。

彼女は弓を胸に抱き、深く頷いた。

「……必ず、成し遂げてみせます」

荒地に差し込む朝日が、三人の影を長く伸ばしていく。

新たな力を携え、それぞれの道を進む時が近づいていた。


お読みいただきありがとうございます。いけるところまで連続投稿!(不定期ですが毎日目標)。

面白かったらブクマ&感想で応援いただけると嬉しいです。


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