奏の会—ギルドに集う
夕暮れのトワイライト。
広場のざわめきが収まり、ギルドの木造庁舎には人々の明かりが灯っていた。
会議室に集ったのは、見慣れた仲間たちと――新たな顔ぶれ。
「改めて紹介するわ。エルヴァイン公爵家の長女、クラリスです」
アマネが紹介するより先に、本人が堂々と一歩進み出る。
プラチナブロンドの髪がランプの光に揺れ、碧眼がきらめいた。
「――私は奏の会のリーダー。そして今日から、この街の仲間として働くわ」
◇
「グランディール公爵家次男、ユリウスだ」
背筋を伸ばした青年が深々と頭を下げる。
「これまでは……父の命令で皆を監視していた。だが宰相が消えた今、俺は俺の矜持で動く。どうか受け入れてほしい」
カイルは一瞬驚き、すぐに柔らかな笑みを浮かべる。
「矜持か。ならば――ここで示してくれ。街は、理屈より行動を求めている」
ユリウスの瞳がまっすぐに光った。
◇
「おう! 待たせたな!」
豪快な声と共に扉が開く。
短髪を逆立てた逞しい青年――ダリオが、笑顔でジークの肩を叩く。
「ここが噂のトワイライトか! 任せろ、治安は俺が守ってやる!」
「お前が来るなら百人力だ!」ジークも豪快に笑い返す。
二人の手が強くぶつかり合い、木造の壁が響いた。
◇
「……ふふっ、相変わらず騒がしいわね」
後ろから現れたのは赤茶の髪を三つ編みにした少女――セリーヌ。
「私は市場を整えるわ。交易が滞れば、人はすぐ不安になるもの。ミナ、力を貸してくれる?」
「もちろん! 資材も在庫も管理は私の得意分野だから!」
二人が資料を広げ、既に打ち合わせを始める。
◇
最後に小柄な黒髪の青年が入ってきた。
「……僕はトーマ。庶民代表、ってわけじゃないけど……声を拾う役なら、任せてくれ」
カイルが頷き、にやりと笑う。
「お前と議論するのは楽しみだ。民の声を伝える翻訳者、待ち望んでいたよ」
二人の視線が交差し、静かな火花が散る。
◇
こうして――
勇者を支えた学園の小さな輪「奏の会」は、
今、ギルドという形で街に再び根を下ろした。
アマネは胸の奥で小さく呟く。
(……ありがとう、クラリスさん。みんな。また一緒に歩けるんだね)
彼女の笑みを見て、クラリスは碧眼を細めた。
「ええ、アマネ。奏の会は――ここからが本番よ」
夜のトワイライトに、新しい仲間たちの灯がともった。
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