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狼の拳—仲間の盾

昼下がりの広場。

騒ぎが起きたのは、炊き出しの列に亜人と人間の若者が同時に割り込んだ時だった。

「俺たちだって腹減ってんだ!」

「順番守れないなら出ていけよ!」

肩がぶつかり、罵声が飛ぶ。

周囲が緊張に包まれたその瞬間――。

「やめろ!」

鋭い声とともに、一人の大柄な青年が二人の間に割って入った。

黒髪のショートに狼耳、鋭い琥珀の瞳。

筋肉質の腕で二人を軽々と押し分け、堂々と胸を張る。

「ここは共に生きる場所だろ。喧嘩するなら、まず俺を倒してからにしな!」

周囲がどよめく。

その迫力に、若者たちは舌打ちして退いた。

「……お前、名前は?」

ジークが腕を組んで問いかける。

「ランドルフ。獣人族の戦士だ。難民を守るのが俺の役目だった」

狼耳がぴくりと動く。

まっすぐな眼差しに、ジークはふっと笑った。

「いいじゃねえか。その拳、腐らせるのはもったいねえ」

「お前は?」

「ジーク。人間だが……まあ、拳で通じる相手を探してたところだ」

言葉より早く、二人は拳を打ち合わせた。

重い音が響き、互いに笑みをこぼす。

夕暮れの訓練場。

ランドルフとジークが並び立ち、若者たちを相手に組手を繰り返す。

人間も亜人も関係なく、倒されては起き上がり、汗を流す。

「これからは混成だ。人も獣も、街を守る盾になれ!」

ランドルフの声に、歓声が上がる。

焚き火の周りでは、アマネとリュシア、エリスティアが見守っていた。

「……あの二人、似てるね」

リュシアが笑みをこぼすと、アマネも頷く。

「直情型同士、通じ合ってるんだろ」

エリスティアは尾を揺らし、目を細める。

「人と亜人の壁を壊す……こういう出会いを、待っていたのかもしれない」

その夜、混成自警団が正式に立ち上がった。

まだ粗削りだが、街の灯を守る新しい盾。

人々の心に、小さな安心と誇りが芽生えていく。


お読みいただきありがとうございます。いけるところまで連続投稿!(不定期ですが毎日目標)。

面白かったらブクマ&感想で応援いただけると嬉しいです。


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