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王都の喧騒—再会の声

王都の門をくぐった瞬間、アマネとリュシアは息を呑んだ。

石畳の広場は臨時の炊き出し場に変わり、鍋の列が幾つも煙を上げている。

怒鳴り声と泣き声と笑い声が入り混じり、街全体が熱を帯びていた。

「……数日で、こんなに」

リュシアが杖を握り直す。

庵を出てからわずか三日。王都はもう、別の顔をしていた。

「アマネ! リュシア!」

鍋の向こうから駆けてきたのはジークだった。額には汗、腕には小麦粉がこびりついている。

「おかえり! いや、おかえりって言うより――すぐ手伝え!」

「いきなりすごい歓迎だね……」

アマネは苦笑しつつ刀を背に回し、腕まくりをする。

リュシアも頷き、スカートの裾を整えた。

広場の一角、簡易机に山積みの報告書を前にアルトが座っていた。

「次、井戸の使用順で揉めた件……」

「……それは夜警を増やして交代制に」

隣でカイルが即答し、報告をさばいていく。

そこへアマネとリュシアが現れると、二人は一瞬だけ手を止めた。

「――戻ったか」

アルトの声には疲労がにじんでいたが、それでも笑みがこぼれる。

カイルも軽く手を振り、「君たちがいなくて、本当に大変だった」と冗談めかして言った。

「ただいま」

アマネが短く返す。その言葉に広場の空気がわずかに柔らぐ。

そこへ、白銀の髪に角を持つ小柄な少女が駆け寄ってきた。

赤い瞳をきらきらと輝かせ、リュシアの杖を見て大きく目を丸くする。

「すっごーい! 光ってる! ねえ、どうやったらそんな杖持てるの!?」

ジークが慌てて少女の肩をつかむ。

「こら、セラフィオ! また勝手に……!」

少女はミナを見つけて、ぱっと駆け寄った。

「師匠っ! 今日も釘打ち教えてー!」

「し、師匠って呼ぶなー!」

ミナの慌てふためく声に、広場のあちこちから笑いが起こった。

アマネとリュシアは顔を見合わせ、自然と笑みを交わす。

緊張と不安に満ちた街の中で、その笑いはたしかな希望の灯のように広がっていった。


お読みいただきありがとうございます。いけるところまで連続投稿!(不定期ですが毎日目標)。

面白かったらブクマ&感想で応援いただけると嬉しいです。


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