共鳴—星を分け合う二人
静かな最奥。
祭壇の上で〈星映水晶〉が青白く揺らめき、洞窟全体を淡く照らしていた。
光は柔らかく、それでいて胸の奥を突き刺すように鋭い。
アマネとリュシアは並び立ち、同じように息を呑んでいた。
月明かりの下で生まれた二人は、偶然にも同じ日に祝われる――その記憶が自然と蘇る。
「同じ日に生まれたの、運命みたいだね」
かつて交わした笑みが、今また胸をあたためていた。
◇
「アマネ……触れましょうか」
リュシアが杖を胸の前に抱きしめ、そっと問いかける。
アマネは頷き、刀の鞘から手を離した。
「うん、一緒に。二人で」
同じ歩幅で、同じ呼吸で。
光に導かれるように祭壇へ進む。
靴音さえも響かず、ただ心臓の鼓動だけが二人の間で重なっていく。
石台に近づくほど、水晶の輝きは強くなった。
青と銀の光が溶け合い、二人の頬を照らす。
その瞬間、囁きが再び胸をよぎる。
――力を独り占めしたいか。
――背負うのは誰のためだ。
「……っ」
アマネの手がわずかに震える。だが横を見ると、リュシアも同じように唇を結び、視線を逸らさずに立っていた。
「大丈夫、私たちは一緒」
リュシアの声が、揺れる心を支える。
「うん……一緒だよ」
アマネも応える。
◇
二人は同時に、そっと両手を伸ばした。
指先が水晶の冷たい表面に触れた瞬間、洞窟が白い光に満ちた。
「――っ!」
視界が一瞬、真昼のように明るくなる。
アマネとリュシアは反射的に手を離しかけたが、互いの手が触れ合い、そこで踏みとどまった。
「離さないで」
「うん……!」
握る力が重なる。呼吸も、鼓動も、ぴたりと重なっていく。
同じ日に生まれた二人が、まるで鏡合わせの存在のように。
◇
水晶の輝きが二つに裂けた。
青白い光が刀の鞘へ流れ込み、銀の光がリュシアの杖へ吸い込まれていく。
アマネの刀身は淡く星を散らし、斬撃ごとに粒子が舞い上がる。
「……これが……」
彼女は息を呑み、刀を掲げた。まるで夜空を切り取ったような輝きがそこにあった。
リュシアの杖の先端では、水晶が浮遊し始めた。
炎に揺らめき、氷に凍り、雷に閃く。
「力が……流れ込んでくる」
彼女の指先が震えたが、目の奥は確かな決意で光っていた。
二人の手からはなぜかまだ温もりが消えない。
光が分かたれても、心は一つのまま。
◇
洞窟全体が低く唸りを上げた。
石壁が震え、天井から砂が降る。
水晶が選んだ二人を試すかのように、空気がざわめき始める。
「これが……最終の試練」
リュシアが息を呑む。
アマネは刀を構え、隣に立つ彼女に微笑んだ。
「一緒に乗り越えよう。私たちならできる」
二人の声が重なる。
双子のように揃った呼吸のまま、彼女たちは迫りくる影へと身を構えた。
――勇者と聖女。
だが今ここにいるのは、肩書きではなく、ただ同じ日に生まれた二つの光。
その心をひとつにして、試練へと立ち向かおうとしていた。
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