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共鳴—星を分け合う二人

静かな最奥。

祭壇の上で〈星映水晶〉が青白く揺らめき、洞窟全体を淡く照らしていた。

光は柔らかく、それでいて胸の奥を突き刺すように鋭い。

アマネとリュシアは並び立ち、同じように息を呑んでいた。

月明かりの下で生まれた二人は、偶然にも同じ日に祝われる――その記憶が自然と蘇る。

「同じ日に生まれたの、運命みたいだね」

かつて交わした笑みが、今また胸をあたためていた。

「アマネ……触れましょうか」

リュシアが杖を胸の前に抱きしめ、そっと問いかける。

アマネは頷き、刀の鞘から手を離した。

「うん、一緒に。二人で」

同じ歩幅で、同じ呼吸で。

光に導かれるように祭壇へ進む。

靴音さえも響かず、ただ心臓の鼓動だけが二人の間で重なっていく。

石台に近づくほど、水晶の輝きは強くなった。

青と銀の光が溶け合い、二人の頬を照らす。

その瞬間、囁きが再び胸をよぎる。

――力を独り占めしたいか。

――背負うのは誰のためだ。

「……っ」

アマネの手がわずかに震える。だが横を見ると、リュシアも同じように唇を結び、視線を逸らさずに立っていた。

「大丈夫、私たちは一緒」

リュシアの声が、揺れる心を支える。

「うん……一緒だよ」

アマネも応える。

二人は同時に、そっと両手を伸ばした。

指先が水晶の冷たい表面に触れた瞬間、洞窟が白い光に満ちた。

「――っ!」

視界が一瞬、真昼のように明るくなる。

アマネとリュシアは反射的に手を離しかけたが、互いの手が触れ合い、そこで踏みとどまった。

「離さないで」

「うん……!」

握る力が重なる。呼吸も、鼓動も、ぴたりと重なっていく。

同じ日に生まれた二人が、まるで鏡合わせの存在のように。

水晶の輝きが二つに裂けた。

青白い光が刀の鞘へ流れ込み、銀の光がリュシアの杖へ吸い込まれていく。

アマネの刀身は淡く星を散らし、斬撃ごとに粒子が舞い上がる。

「……これが……」

彼女は息を呑み、刀を掲げた。まるで夜空を切り取ったような輝きがそこにあった。

リュシアの杖の先端では、水晶が浮遊し始めた。

炎に揺らめき、氷に凍り、雷に閃く。

「力が……流れ込んでくる」

彼女の指先が震えたが、目の奥は確かな決意で光っていた。

二人の手からはなぜかまだ温もりが消えない。

光が分かたれても、心は一つのまま。

洞窟全体が低く唸りを上げた。

石壁が震え、天井から砂が降る。

水晶が選んだ二人を試すかのように、空気がざわめき始める。

「これが……最終の試練」

リュシアが息を呑む。

アマネは刀を構え、隣に立つ彼女に微笑んだ。

「一緒に乗り越えよう。私たちならできる」

二人の声が重なる。

双子のように揃った呼吸のまま、彼女たちは迫りくる影へと身を構えた。

――勇者と聖女。

だが今ここにいるのは、肩書きではなく、ただ同じ日に生まれた二つの光。

その心をひとつにして、試練へと立ち向かおうとしていた。


お読みいただきありがとうございます。いけるところまで連続投稿!(不定期ですが毎日目標)。

面白かったらブクマ&感想で応援いただけると嬉しいです。


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