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北部の森、初任務の夜

北部の森。昼間でも薄暗い木々の間を、アマネたちは進んでいた。

先頭はジーク。ミナが地図と方位器を確認しながら、後方をアマネとリュシア、そして緊張気味のロイクが守る。エリスティアは耳を澄ませ、森の気配を探っていた。

「……やっぱり、この辺り。魔物の気配が濃いわ」

「ギルドへの報告でも、この森で不審な人影を見たってあったな」ジークが答える。

ロイクは剣の柄を握りしめ、目を逸らさないように必死だった。

「ぼ、僕だって……足手まといにはならないから……!」

「力むなって」アマネが軽く肩を叩く。「任務はチームでやるもの。私たちがいるんだから」

夕刻。森の奥での調査を終え、一行は野営を決めた。

ミナがバッグから折り畳み式の器具を取り出す。

「見ててね! 簡易シャワー装置、改良版!」

魔石をはめると、霧状の温水が噴き出す。リュシアがその周囲に結界を張り、冷気を遮断する。

「これで夜でも冷えずに使えるわ」リュシアが淡々と告げる。

「おぉ〜!」アマネが感嘆の声をあげ、エリスティアは珍しそうに水に手をかざした。

ただ一人、ロイクは耳まで真っ赤にして固まっている。

「あ、あの……そ、それって……女の人も使うんですか……?」

「当たり前じゃない」アマネがさらり。

「だ、だって! 声とか、水音とか……聞こえちゃ……」

「何を想像してるの?」エリスティアが涼しい顔で微笑み、ロイクの視線を受け流す。

「あなたは入場禁止。絶対に近づかないこと!」ミナがきっぱりと言い渡す。

リュシアはくすりと笑い、「見張り番をしていればいい。これは任務中の休養だ」と軽く片付けた。

夜。焚き火を囲んで、ジークとロイクが見張り番に立つ。

森の闇の奥からはときおりフクロウの声。

背後の結界の向こうから、女子たちの談笑がかすかに漏れてきて、ロイクは火の粉を見つめながら落ち着かない。

「……なぁ、ジークさん」

「ん?」

「女の人って……すごいよな……」

「今さら気づいたのか」

ジークの短い返しに、ロイクはさらに赤くなり、焚き火の火に顔を近づけて誤魔化した。

焚き火の灯りに揺れるその横顔に、アマネはふっと笑みをこぼす。

「可愛いなぁ、ロイク」

――小さな可愛さと、大人びた成長の狭間で揺れる少年。

その姿は、彼女たちの旅路に少しの温もりを添えていた。


お読みいただきありがとうございます。いけるところまで連続投稿!(不定期ですが毎日目標)。

面白かったらブクマ&感想で応援いただけると嬉しいです。


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