架け橋となるギルド—恐れと決意
王城の応接間。謁見を終えた一行は、静けさの中で向かい合っていた。
アルトが広げた地図の上には、ルナリアとソレイユ、そしてその間に描かれるまだ名もない未来が重なる。
「……セドリック王は渋ったが、フローラ王妃が背中を押してくれた」
アルトが静かに切り出す。
「ただし条件付きだ。“ソレイユが責任を持つ”こと。そして“ギルドの依頼を通す案件に限る”こと。この二つだ」
「つまり、ギルドそのものが国と国を繋ぐ窓口になる、ということね」
リュシアが姿勢を正す。
「私たちの役割は――ますます大きくなるわ」
ジークは深く息を吸い込み、拳を握った。
「……正直、怖いな。今までみたいに、街の困りごとや魔物退治じゃない。国同士の橋渡しだぞ。……もし失敗したら、全部が瓦解する」
その言葉に、場の空気が一瞬重くなる。
ジークの真剣さは皆に伝わったが、同時に“揺らぎ”も見えてしまったのだ。
ミナが静かにその隣に立ち、迷いのない瞳を向けた。
「……だから、やるのよ」
「え?」とジークが目を瞬く。
「怖いのは分かる。でもね、ジーク。あなたが足を止めたら、ギルドは前に進めないの。みんながあなたを見てるのよ。勇者や聖女じゃなく、“ジーク・フォン・ヴァルハルト”という人間を」
ジークの喉が音を立てる。
逃げ道を塞がれるような言葉。しかしその響きは、温もりを帯びていた。
「……俺が、やるしかないってことか」
「そう。あなたにしかできない。だから私が支える。逃げないで、ちゃんと背負って」
ミナの強い言葉に、アマネが思わず笑みを漏らす。
「……やっぱり、ミナは頼もしいね」
リュシアも頷き、アルトは口元を引き締める。
「ジーク、これからは一つ一つの成果が、前例として刻まれていく。お前が歩めば、後ろに道ができるんだ」
「そして、その道を誰もが歩けるようにするのが……僕たちの役目だ」
カイルの言葉が締めくくるように響いた。
ジークは拳をぎゅっと握り直し、大きく息を吐いた。
「……分かった。やるよ。逃げたりなんかしない。俺たちで、ギルドを架け橋にするんだ」
その決意に、全員が力強く頷いた。
小さな応接間で交わされた言葉が、この先の時代を変えていく――そう思えるほどに、確かな熱を帯びていた。
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