ルナリア王都到着—多様の街
石畳の道を馬車が進むたび、両脇に広がる景色はソレイユとはまるで違う趣を見せていた。
軒を連ねる店には、鮮やかな布を身に纏った獣人の商人たち。香辛料の香りが漂い、耳や尾を揺らしながら声を張り上げている。露店には大ぶりの果実や、亜人の手による繊細な工芸品が並び、街全体が独特の活気に包まれていた。
「……なるほど。これが、ルナリア王都」
アルトが小声で感嘆を漏らす。
「耳や尻尾、角……本当に色んな人が暮らしているのね」
リュシアが窓越しに外を眺めると、子どもたちが好奇心に満ちた瞳で馬車を追いかけてきた。
ジークは腕を組み、真剣な眼差しで街の空気を測るように観察している。
「見物人は多いが、敵意は……今のところ無さそうだな」
「でも、視線は刺さるね。人間の使節団なんて、そうそう来ないんでしょ」
クラリスが淡々と告げると、ユリウスが少し肩を竦める。
「俺たちが“物珍しい展示物”に見えているなら、まだいい。警戒に変わらないうちに、立ち回らないとな」
アマネは外から向けられる視線に気づき、そっと微笑んで手を振った。驚いた様子の子どもたちが顔を赤らめて逃げ出し、屋台の影から母親らしき人物が頭を下げる。
「……やっぱり、同じなんだね。暮らしの中に家族がいて、笑ってる」
その言葉にリュシアも頷く。
「そうね。文化も姿も違うけれど、“人”であることに変わりはないわ」
やがて馬車は石造りの城門を抜け、王城の前へと至った。白亜の壁は荘厳にそびえ立ち、塔の頂からは王家の旗が風にはためいている。
「いよいよか」
アルトが息を整え、仲間たちに目を配る。
「気を引き締めよう。これからが本番だ」
馬車がゆっくりと止まり、使節団は亜人の兵士たちの誘導に従って王城の奥へと進んでいった。
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