揺さぶられる信用—横取りの影
ギルド本部に届いた新たな依頼は、地方の小村で頻発する盗賊被害の調査だった。依頼人は村長。村の収穫物や道具が狙われ、村人たちは疲弊しているという。
「俺たちで引き受けよう」
ジークが立ち上がり、ロイクやユウマたち若手も意気込みを見せた。
しかし翌朝、村へ向かった一行を待っていたのは――既に盗賊を討伐し、凱旋する兵士団の姿だった。村人たちは歓声を上げ、兵士の旗に拍手を送る。
「遅かったな、冒険者ども」
兵士の指揮官が嘲るように言い放つ。
「……これはどういうことだ?」
ジークが詰め寄ると、村長は困惑した表情を浮かべる。
「確かにギルドに頼んだが、その後に兵が現れて、すぐに片付けてしまって……」
噂は瞬く間に広まった。
「ギルドは当てにならない」
「やはり王侯貴族の兵こそが頼りだ」
ジークたちの耳に、そんな冷たい声が突き刺さる。
*
「完全に仕組まれてるな」
ギルドに戻り、ジークは机を叩いた。
「依頼を横取りし、わざと遅れたように見せかけた……宰相派の嫌がらせだ」
ミナが冷静に言葉を返す。
「でも、村人にとっては“助かった”ことが事実。ギルドが遅れたように見えるのも事実。……だから、誠実に実績を積むしかないわ」
「そうだな」
ジークは大きく息を吐き、仲間たちを見渡した。
「俺たちの仕事は、貴族に勝つことじゃない。依頼人に応えることだ。次は必ず“最後までギルドが守り切った”と胸を張れる依頼をやろう」
拳を握り締めるジークに、若手たちが声を揃えた。
「「おう!」」
宰相派の思惑とは裏腹に、仲間たちの結束はむしろ強まっていった。
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