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揺さぶられる信用—横取りの影

ギルド本部に届いた新たな依頼は、地方の小村で頻発する盗賊被害の調査だった。依頼人は村長。村の収穫物や道具が狙われ、村人たちは疲弊しているという。

「俺たちで引き受けよう」

ジークが立ち上がり、ロイクやユウマたち若手も意気込みを見せた。

しかし翌朝、村へ向かった一行を待っていたのは――既に盗賊を討伐し、凱旋する兵士団の姿だった。村人たちは歓声を上げ、兵士の旗に拍手を送る。

「遅かったな、冒険者ども」

兵士の指揮官が嘲るように言い放つ。

「……これはどういうことだ?」

ジークが詰め寄ると、村長は困惑した表情を浮かべる。

「確かにギルドに頼んだが、その後に兵が現れて、すぐに片付けてしまって……」

噂は瞬く間に広まった。

「ギルドは当てにならない」

「やはり王侯貴族の兵こそが頼りだ」

ジークたちの耳に、そんな冷たい声が突き刺さる。

「完全に仕組まれてるな」

ギルドに戻り、ジークは机を叩いた。

「依頼を横取りし、わざと遅れたように見せかけた……宰相派の嫌がらせだ」

ミナが冷静に言葉を返す。

「でも、村人にとっては“助かった”ことが事実。ギルドが遅れたように見えるのも事実。……だから、誠実に実績を積むしかないわ」

「そうだな」

ジークは大きく息を吐き、仲間たちを見渡した。

「俺たちの仕事は、貴族に勝つことじゃない。依頼人に応えることだ。次は必ず“最後までギルドが守り切った”と胸を張れる依頼をやろう」

拳を握り締めるジークに、若手たちが声を揃えた。

「「おう!」」

宰相派の思惑とは裏腹に、仲間たちの結束はむしろ強まっていった。


お読みいただきありがとうございます。いけるところまで連続投稿!(不定期ですが毎日目標)。

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