見守る勇者のまなざし
アマネは庵の子どもたち――ユウマとミオ――と共に、討伐依頼に赴いた。目的は近郊の森で群れを成すオオカミ型魔物の駆逐。かつて自分も何度も剣を振るった相手だが、今日はあくまで“同行者”だ。
「前衛は俺が受ける! アマネ姉ちゃんは見てて!」
「横から流れたやつは、私が処理するから!」
かつて子どもだった二人が、自然に役割分担をしている。その姿に胸が熱くなる。
剣が閃き、矢が放たれ、仲間同士が声を掛け合う。未熟さは残るが、確かに連携は生まれていた。
(……危ない!)
一瞬、横合いから飛びかかった魔物に視線が吸い寄せられる。体が反射的に動きかけたが――すぐにユウマの盾が弾き、ミオの魔法が追撃して仕留めた。
アマネは立ち尽くし、唇を噛む。
あの時、ルシアンやアサヒが自分を見守るときも、きっとこんな気持ちだったのだろう。
――飛び込んで守ってやりたい。
――でも、手を出さずに信じなければ、成長はない。
その葛藤の先に、守られていた存在が自分の力で立つ姿を見たときの、涙が出るほどの嬉しさ。
「……強くなったね」
小さく呟いた声は、戦場の喧騒にかき消された。
討伐が終わり、ユウマとミオが笑顔で報告に駆け寄ってくる。泥と汗にまみれたその笑顔は、かつて庵の裏山で遊んでいたあの頃のままだ。
「アマネ姉ちゃん、どうだった? ちゃんと戦えてたでしょ!」(ユウマ)
「まだまだ未熟だけど、私も頑張るよ!」(ミオ)
アマネは一人ひとりの頭を撫でて、穏やかに笑った。
「……うん。大丈夫。ちゃんと見てたよ。すごく、立派だった」
その言葉は、まるでかつて自分が受け取った優しい眼差しの“お返し”のように響いた。
お読みいただきありがとうございます。いけるところまで連続投稿!(不定期ですが毎日目標)。
面白かったらブクマ&感想で応援いただけると嬉しいです。




