報酬をめぐるすれ違い
ギルド掲示板に出された依頼は、
「薬師のための薬草採取」。
新人のロイクとレナが山に入り、苦労の末に薬草をどっさり抱えて帰還。
「これで依頼達成だ!」と胸を張る二人。
だが、薬師の老人は眉をひそめた。
「……これでは使えん。根が潰れておる。葉も泥で傷んでいる」
ロイクは反発する。
「依頼に“綺麗に採れ”なんて書いてなかった!」
薬師は憤慨する。
「素人仕事をされては困る! 命を繋ぐ薬だぞ!」
——事務所が険悪な空気に包まれたその時、カイルが現れる。
「落ち着こう。依頼書には書かれていなかった……それは確かだ」
薬師が反論しようとするが、カイルは静かに続ける。
「けれど依頼の本質は“役立つ薬草を得ること”だろう? 冒険者は“成果の量”、薬師は“質”。どちらも間違っていない」
ミナも横から口を挟む。
「次からは“採取方法”や“状態”まで依頼書に記すようにしましょう。ギルドとして、条件を明確にします」
カイルがにっこり笑う。
「それに……この若者たちは不器用だが誠意はある。多少の報酬は渡してやってはどうかな?」
薬師は渋々ながらも同意。
「次は丁寧に採ってこい。そうすれば、役に立つ薬になる」
ロイクとレナは深く頭を下げた。
——夜、ミナが帳簿をつけながら呟いた。
「依頼人と冒険者の“すれ違い”をなくすのが、ギルドの役目だね」
ジークが頷く。
「それを仕組みにできれば、勇者に頼らなくても民は安心できる……」
カイルはグラスを傾け、静かに笑った。
「小さな積み重ねが、大きな信頼を生む。教会も、国も同じさ」
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