交差する影—偶然の合流
森の湿気は肌にまとわりつき、葉の匂いが濃く漂っていた。班ごとに散ったはずの道は、やがて一本に収束する。
ジークが先頭で斧を担ぎ、獣道を踏み割っていたが、唐突に足を止めた。
「……塞がれてるな」
前方の道は、大木が根こそぎ倒れて塞いでいた。苔むした土がまだ湿り、落ちたばかりだと分かる。自然に崩れたにしては不自然に整いすぎている。
「進めませんね」カイルが冷静に見上げる。「枝の切り口……鋭い。誰かが意図的に」
アマネは胸の奥がざわつくのを感じた。庵の裏山で風倒木を見たことがあるが、これは違う。まるで“待ち伏せの扉”だ。
――その時。
別方向から人影が近づいた。草を分けて現れたのは、アルトたち第一班だった。リュシアが慎重に裾を押さえ、アルトが前を護るように歩いてくる。
「……道が途切れていた。こちらも進路を変えるしかなかった」アルトの額には汗が光っていた。
「偶然だな」ジークが腕を組む。だが声に棘はなく、むしろ安堵が混じっていた。
ミナが明るく割って入る。「効率的に考えれば、合流して一緒に進むのが正解! ね、二班合同で!」
「……確かに」リュシアは静かに頷いた。「今は任務より、安全を優先すべきです」
アルトも短く同意する。「不自然な倒木だ。罠か、仕組まれたか……何者かの思惑がある」
カイルの瞳が細く光る。「……ラインハルト、かもしれませんね」
アマネは唇を噛んだ。狙いはきっと“孤立”。でも、こうして一緒になれたのは偶然の救いだった。
⸻
森は次第に静まり返っていった。鳥の声が途絶え、風さえも止む。
「……感じるか?」ジークが低く呟く。
土の匂いに混ざって、鉄錆のような獣臭が漂う。耳を澄ますと、重い唸りがいくつも重なっていた。
アルトが剣を抜き、前へ出る。リュシアは即座に祈りの構え。ミナが発明具を構え、カイルは魔法陣を描き始める。
アマネも深呼吸し、掌に小さな光を集めた。
――闇の中、赤い目がいくつも灯る。
「来る……!」
枝を裂き、黒い影が飛び出した。
お読みいただきありがとうございます。しばらくは連続更新で駆け抜けます。ブクマ&感想ぜひ。




