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託す勇気

庵の朝は静かだった。

炉端で炊かれる粥の香りと、香草を刻む音だけが響く。

食卓に並ぶのは質素だが、どれも体をすっと目覚めさせるようなものばかり。

アマネは箸を止め、笑顔を浮かべた。

「やっぱり庵のごはんって、体が軽くなる感じがするね」

「だから言ったでしょう」

リュシアがさらりと返す。その声音は穏やかだが、芯の通った響きがある。

エリスティアは器を見下ろし、少し躊躇してから口を開いた。

「……私、ルナリアのことは……私自身が責任を持って解決しなければならない」

その声には誇りと同時に、硬さが滲んでいた。

アマネが器を置き、まっすぐに見つめる。

「それでも、一人で全部背負わなくていい。力を借りることも戦いの一部だよ」

リュシアがすぐに続ける。

「託すことは、弱さじゃない。あなたが生きてここに来たのは、その証拠」

エリスティアは視線を落とした。

「でも……仲間に重荷を背負わせるのは……」

そこでルシアンが静かに言葉を置く。

「重荷は、分け合うことで歩ける道になる」

アサヒが微笑みを添える。

「頼ることで広がる未来もあるわ。あなたが選んだ道を、私たちは支えられる」

その声に背を押されるように、エリスティアの瞳が潤む。

そして、しっかりと顔を上げた。

「……分かった。

すべてを託すのは怖い。だけど、あなたたちとなら……一緒に戦いたい」

アマネは頷き、リュシアもそっと笑みを浮かべる。

二人の視線が重なり、自然にまたエリスティアへと戻っていく。

「それでいい」

「それがいい」

言葉は違っても、響き合うように重なった。

エリスティアの心の奥に、ようやく温かな光が差し込んでいく。

庵の朝の光が窓から射し込み、三人の横顔を明るく照らしていた。


お読みいただきありがとうございます。いけるところまで連続投稿!(不定期ですが毎日目標)。

面白かったらブクマ&感想で応援いただけると嬉しいです。


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