表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

21/471

模擬演習開始—試練の森へ

夏の陽射しが強まり、石畳を照り返す光に目を細める。学園広場に集められた一年生は、背嚢と外套を整え、緊張した面持ちで整列していた。

壇上に立つのは、鋼のような肩幅を持つ教官――バルド・エッケル。その声は短く、鋭い。

「三日間の模擬演習を行う。目的は野営、索敵、連携。……生きて戻れ」

ざわめきが広がる。「生きて戻れ」の一言に、空気が一気に張り詰めた。

名簿が読み上げられる。

「第一班――アルト・ソレイユ、リュシア・フォン・カーディナル、ミナ・フォン・カストレード。

第二班――ジーク・フォン・ヴァルハルト、カイル・フォン・アウグスティヌス、アマネ。」

一瞬、空気が止まった。勇者の血を引くアルトと聖女リュシア、そこに庶民のミナ。対して第二班は、豪放なジークと理屈屋カイル、そして庵育ちのアマネ。

「……なんか、思ったよりバラバラだね」アマネが小声でつぶやく。

「効率的に言えば、まあバランス取れてるんじゃない?」ミナが肩をすくめて笑う。

ジークは斧を担ぎ直し、にやりと笑った。

「組み合わせなんざどうでもいい。強ぇかどうか、そんだけだ」

カイルは眼鏡を押し上げ、冷静に言う。

「班で課題を達成することが求められている。勝手な独断は減点です」

「減点で死んだら意味ないでしょー?」ミナが茶化すと、周囲に小さな笑いが生まれた。

やがて号令が下り、班ごとに出発する。

アルトは真っ直ぐ背を伸ばし、「西の小型魔物の掃討だ。報告は三日目の朝」と仲間に告げる。

リュシアは微笑み、「怪我をされたら、必ず合図をください」と静かに続けた。

アマネの班は南へ。水場と薪を探し、野営地を整えるのが役割。ジークが先頭に立ち、ミナは地図を覗き込み、カイルは羊皮紙に記録を取りながら歩く。

照りつける太陽の下、森の入口に影が伸びる。

そこに足を踏み入れた瞬間――蝉の声が止まり、ひんやりとした湿気が全身を包んだ。

胸の奥で、アマネは小さく息を整える。

「……よし、がんばろう」

模擬戦は始まったばかり。けれど、森の奥にはすでに不穏な気配が漂っていた。


読了感謝!模擬演習が始まります。更新は不定期ですが毎日目標です。ブクマ&感想が励みになります。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ