表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

207/471

新たなる挑戦

ジークは空になったグラスを置き、真剣な顔で仲間を見渡した。

「……ギルドの話をしようか」

その一言に、六人の輪がすっと静まった。

祝宴のざわめきは遠のき、テーブルの周囲だけが別の空気に包まれる。

「三年間、ずっと考えてた。俺たちみたいな特別な連中じゃなくても、民が自分で立ち上がれる仕組みを作れないかって。王宮や教会に頼るだけじゃなく、互いに助け合える土台をな」

アマネが目を細める。

「それが……ギルド?」

ジークは力強くうなずいた。

「そうだ。冒険者も、職人も、商人も。立場や出自を超えて力を貸し合える場所。王族や聖職者じゃなくても、国を支えられるって証明したい」

言葉を聞きながら、ミナが穏やかな笑みを浮かべる。

「でも、形にするのは簡単じゃなかったの。資金も、場所も、人の信頼も……足りないものばかりで」

グラスを胸元で抱え、少し視線を落とす。

「そこで助けてくれたのが、父なの」

アルトが頷いて口を添える。

「……カストレード伯爵だね」

「ええ」ミナは誇らしげにうなずいた。

「父は『夢を笑って国は前に進むのか』って言ってくれて。最初に後ろ盾になってくれたの。だから信用を得られて、訓練所を整えて、登録制度を始められたんだ」

リュシアの瞳が潤む。

「素晴らしいわ……理解ある方なのね」

ジークも力強く言葉を重ねた。

「ああ。伯爵の支えがなかったら、ギルドは夢のままで終わってた」

カイルがグラスを傾けながら、思案するように口を開く。

「つまり、王宮や教会の枠組みとは別に、民が自立して動ける基盤ができる……。それは確かに新しい挑戦だね」

アルトは真剣な眼差しでジークを見据える。

「だが、制度化するには法整備が欠かせない。俺が協力できるとすれば、そこだ。ルールを明確にしなければ、悪用される危険もある」

ジークは一瞬言葉を失ったが、やがて真っ直ぐ頷いた。

「……頼む。俺には熱意はあっても、法の細かさまでは分からない」

アマネが微笑み、グラスを傾けた。

「でも、こうして聞くと、すごく“人の力”なんだね」

その言葉に、アルトが静かに頷いた。

「……ああ。勇者や聖女に頼るだけじゃ、国は長く続かない。ギルドの存在が、その穴を埋めることになる」

カイルも続ける。

「人が自分で動き、助け合う仕組み。信仰や王権を超えて、それが根付けば……きっと強い力になる」

ジークは照れくさそうに鼻を鳴らした。

「大げさだな。でも、目指すのはそこだ」

ミナが笑みを浮かべ、誇らしげに彼を見つめた。

六人の輪に、未来を思わせる確かな熱が広がっていった。


お読みいただきありがとうございます。いけるところまで連続投稿!(不定期ですが毎日目標)。

面白かったらブクマ&感想で応援いただけると嬉しいです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ