誕生日会②—広がる輪、奏の会の参加
寮の広間に、次々と人の気配が増えていく。
気がつけば、机の周りには見知らぬ後輩や別クラスの上級生まで集まり、わいわいと笑い声が響いていた。
「アマネさんとリュシアさん、同じ誕生日なんですって?」
「すごい偶然! いや、必然かな……?」
「勇者候補と聖女候補が同じ日に生まれるなんて、やっぱり神意かもしれないな」
自然発生的に広がった輪は、やがて講堂横の大広間へ移ることになった。
大きな空間に灯りが並び、机と椅子が追加され、いつの間にか即席のパーティ会場に。
「やぁ、楽しそうだね」
軽快な声と共に現れたのは、ユリウスを先頭にした「奏の会」の面々だった。
ダリオが陽気に笑い、トーマは「……偶然とは思えないな」と顎に手を当て、セリーヌは両手を胸に当てて微笑む。
「勇者かもしれないアマネと、聖女最有力のリュシアが同じ日に生まれる。
これは――学園にとっても喜ばしいことだ」
ユリウスがそう言うと、大広間に集まった生徒たちが一斉に拍手と歓声を送った。
「すごいな……」
アマネは頬を赤らめ、リュシアも少し照れたように視線を伏せたが、やがて二人で顔を見合わせ、自然に笑った。
その様子を見ていた教師たちも、静かにざわめく。
「これはただの偶然ではないかもしれない」
「やはり勇者と聖女は、神の手によって導かれる存在なのだろう」
形式ばった祝辞ではなく、自然に広がる空気。
その中で、二人はただ仲間や学友から「祝福される女の子」として、温かさを浴びていた。
最後に、ユリウスが再び口を開いた。
「今日という日は、学園全体が祝っているようだな」
その言葉に合わせて、再び大きな拍手が鳴り響いた。
アマネとリュシアは、その音に包まれながら、心からの笑みを浮かべる。
――二人の誕生日は、この瞬間、学園の記憶として刻まれた。
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