誕生日会①—仲間内の祝福
学園寮の広間。
窓から差し込む秋の夕陽が、机いっぱいに並んだ料理や花を柔らかく照らしていた。
「はいっ、準備完了ー!」
両手を腰に当てたミナが満足げに頷く。
「ケーキもちゃんと仕上げたわよ! 今回は飴細工で名前を入れてみたの!」
彼女が指さした大きなケーキには、赤い飴で「Amane」「Lucia」と繊細な文字が踊っていた。
「……俺はひたすら果物を切ってただけなんだがな」
ジークが肩をすくめると、ミナが「それも立派な仕事!」と即座にツッコミを入れ、周囲を笑わせた。
テーブルの中央には、エリシアから届いた上質なノンアルコールのワインの瓶と、レオンからの書簡が置かれている。
ルシアンとアサヒからは温かな毛布と可愛らしい手鏡――実用と愛情が込められた贈り物だ。
アマネとリュシアは、仲間たちを見渡しながら、声を揃えた。
「「ありがとう!」」
笑顔が重なり合うと、広間が一層明るくなったように感じられる。
「本当に家族みたいだな」
ジークがぽつりと呟くと、カイルが「いや、もう家族だよ」と静かに言い、アルトも「そうだな」と頷く。
料理を囲み、笑い声が重なる。
リュシアは自然な微笑みを浮かべ、アマネは頬を染めながらも楽しげに皆と語らっていた。
やがて、火を灯した蝋燭の光の中で、ミナが音頭を取る。
「じゃあ、来年も、再来年も! ずっと一緒にお祝いしよ!」
「絶対!」
アマネとリュシアは同時に言い、互いに手を握り合った。
その瞬間――。
「……あれ? なにしてるの?」
廊下のほうから顔を覗かせたのは、同じ寮の生徒だった。
続いて数人、さらに数人と集まってくる。
「え、今日は誰かの誕生日?」「あの子たち、同じ日なんだって!」
「ちょっと見てみようよ!」
ざわざわと人の輪が広がっていく。
本当は内輪だけのはずが、笑顔と灯りに誘われるように、誕生日会は思わぬ賑わいを見せ始めていた。
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