討伐隊、村へ
学園の鐘が鳴り響く昼下がり。
講義の最中に、慌ただしく教師が駆け込んできた。
「近郊の村から急報だ! 魔物の群れが現れ、住民が避難を余儀なくされている!」
ざわめく教室。アルトたちの班は、即座に立ち上がった。
アルトが前へ出る。
「我々が行くべきだな」
教師陣もすぐに判断を下す。
「討伐隊を編成する。アルトの班はその中心となってもらう。護衛の上級生数名、さらに我々教師も同行する」
アマネは一瞬、息をのんだ。
でもすぐに背筋を伸ばす。
「……はい!」
その声に、リュシアも力強く頷く。
「私も、できることを……守るために」
ミナは腕をぐるぐる回して、やる気を見せる。
「任せといて! ジークと一緒なら、どんな魔物でも蹴散らせるんだから!」
ジークは真面目に剣を確認しながらも、小さく笑った。
「油断するなよ。群れと聞いた」
カイルは眉を寄せて、冷静に分析を口にする。
「村周辺の地形は森と川に囲まれている。魔物が影に潜むなら……影狼の可能性が高い」
アルトは全員を見回し、力強く言った。
「行こう。俺たちで必ず守る!」
* * *
馬車で数時間。討伐隊は村の近くに到着した。
空気がどこか淀んでいる。森の奥から、低い唸り声と羽音が断続的に響いてくる。
「……ただの影狼だけじゃないな」カイルが目を細める。
「腐食スライムの痕跡だ。村の柵が溶けている」
実際、木の柵はどろどろと崩れ、黒い液体が染みていた。
村人たちは広場に集まり、不安そうに討伐隊を見ている。
「お願いします、どうか村を……!」
必死の声に、アマネは拳を握った。
「大丈夫。必ず守ります!」
教師のガロウが前に出て、全員に指示を飛ばす。
「村人の避難を優先だ! ジーク、ミナ、アルト、カイルは迎撃準備! アマネとリュシアは避難誘導を兼ねて防御に回れ!」
全員の声が揃う。
「はい!」
夕暮れの影が伸びる村に、緊張が走る。
森の奥から、赤い眼がいくつも灯り始めていた。
――次回、影狼たちの群れが襲いかかる。
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