川遊びと誕生日の共鳴
川面を揺らす陽光がきらきらと弾け、夏の空気を全身で感じさせる。
庵の近くを流れる清流には、すでにジークとアルトが飛び込み、豪快に水をかけ合っていた。
「ちょっと!もう少し静かに遊べないの!?」
岸から声を張り上げるミナに、ジークが「悪い悪い!」と笑いながら水を跳ね上げる。
結局また怒られて、ミナが腰に手を当てる姿に皆が笑った。
カイルは水際に立ち、周囲を冷静に見守っていた。だが不意にジークの放った水しぶきに直撃し、思わず「……っ!」と目を細める。
「ご、ごめん!」と慌てるジークに、カイルは苦笑しながらも「……狙ってやってるだろ」と小さく返した。
その声音はどこか柔らかく、去年よりもずっと仲間の中に溶け込んでいるのが分かる。
アマネはというと、水辺で足を浸してはしゃぐ仲間たちの様子を眺め、くすぐったいような笑みを浮かべていた。
去年なら恥ずかしさが勝って端で見ていただろう。それでも今は――胸の奥から自然に笑顔がこぼれる。
「……アマネ」
声をかけてきたのはリュシアだった。水辺から少し離れ、岸辺の岩に腰を下ろしている。
「ちょっと休憩、しない?」
「うん!」
二人は並んで座り、濡れた足を揺らしながら川面を見つめた。
しばしの沈黙のあと、リュシアがぽつりと口を開く。
「誕生日が……同じって、不思議よね」
「ほんとに! びっくりしたけど……すっごく嬉しかった!」
アマネは目を輝かせ、笑みを弾ませる。
「リュシアと同じ日なんて、なんだか運命みたい!」
リュシアの頬がほんのり赤く染まる。
「……私も。聖女だからとか、そういう理由じゃなくて。アマネと同じ日だから……特別に思えるの」
「わたしも! なんか、双子みたいだよね」
「ふふっ……そうね」
二人の間に、言葉よりも温かな共鳴が生まれていた。
そのとき、白い毛並みを濡らしたカグヤがふらりと現れた。
川で遊んでいたはずなのに、気づけば二人のそばに来て、静かに身体を寄せてくる。
リュシアがそっと手を伸ばすと、その毛並みから淡い光が広がり、まるで二人を包み込むように揺らめいた。
「……あったかい」
リュシアの声はかすかに震えていた。
アマネも「うん」と短く頷き、その光を両手で受け止めるように包み込む。
カグヤは何も言わない。ただ尻尾を揺らし、二人の間に座り込んだ。
――それだけで十分だった。
やがて夕暮れが近づき、皆で焚き火を囲む時間がやってきた。
川遊びの疲れもどこか心地よく、誰もが頬を紅潮させている。
「当日は、みんなで盛大に祝おうね!」とミナが元気いっぱいに宣言する。
「ケーキは任せろ!」とジークが胸を張り、アルトが「お前が作るのか?」と半ば呆れた顔を見せる。
アマネとリュシアは顔を見合わせ、同時にふっと笑った。
まるで姉妹のように、自然と手が重なり合う。
その夜の焚き火は、炎の赤よりも、二人の笑顔が灯す光で温かく輝いていた。
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