表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

164/471

繋がる声—絆と警鐘

夕餉がひと段落し、庵の囲炉裏にはまだ柔らかな火が灯っていた。

皆の手には、それぞれ新しく渡された小さな通信機。

「ほんとに……これで、どこにいても話せるんだね」

リュシアは掌の上で機器を見つめ、小さな声で呟いた。

かつて孤独の中に囚われていた少女の瞳が、今は不安よりも希望を映している。

「これで、リュシアが寮にいても――いや、教会に戻っても声を届けられる」

カイルの言葉に、リュシアの表情がぱっと和らぐ。

「……ありがとう。カイルが、いてくれるから」

不意の真っ直ぐな返答に、カイルは耳まで赤く染めた。

「へぇ、こいつは便利そうだな!」

ジークは通信機を回して観察し、ミナに手渡す。

「でもね、使いすぎたら夜更かしの原因になるんだから」

ミナが肘でつつくと、ジークは「お、おう」と気まずそうに頷く。

2人のやり取りに周囲から温かな笑い声が広がった。

その笑いの輪の中で、アマネはふと顔を上げる。

「みんなが繋がっていられるなら……きっと、もう一人ぼっちになることはないんだ」

その言葉にアルトが静かに頷いた。

「そうだな。誰かの声が届くって、それだけで人は強くなれる」

「……だが」

低い声が囲炉裏の炎を震わせた。

レオンが通信機を手に取り、真剣な眼差しを向ける。

「これは剣よりも恐ろしいものになるかもしれない」

その場に一瞬、緊張が走った。

「もし他国に渡れば、軍事利用される。敵軍同士が即座に連絡を取り合えるようになれば……国の均衡は容易く崩れるだろう」

皆が言葉を失う中、アマネが思わず口を開いた。

「でも……だからって、怖がって使わないのは違うよね?」

レオンの瞳が一瞬だけ和らぐ。

「……ああ。だからこそ、選ぶ相手を誤ってはいけない。これは“仲間を繋ぐための声”に留めなければならない」

「わかった!」

アマネは力強く頷いた。

それは軽い返事ではなく、きちんと意味を理解した上での同意だった。

「……なるほどな。怖ぇけど、頼もしい武器でもあるってわけか」

ジークが呟くと、ミナが微笑んで補足する。

「声を武器にするか、絆にするか……私たち次第ってことよ」

リュシアは両手で通信機を抱きしめるように持ちながら、小さく言った。

「だったら私は……祈りの声と同じように、これも守りたい」

その言葉に、アサヒとエリシアが同時に頷いた。

「ええ、それでいいのよ」

「声は、人を縛るためではなく、人を繋ぐためにある」

夜は更け、囲炉裏の火も小さくなる。

だがその夜、庵の仲間たちの間には――

確かに“声で繋がる新たな絆”が芽生えていた。


お読みいただきありがとうございます。いけるところまで連続投稿!(不定期ですが毎日目標)。

面白かったらブクマ&感想で応援いただけると嬉しいです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ