再び庵へ—大人たちとの再会
夏の山道を抜けると、懐かしい茅葺の屋根が見えてきた。
庵――去年、仲間たちが初めて本音をぶつけ合い、成長への一歩を踏み出した場所だ。
「着いたー!」
先頭を歩いていたアマネが、弾む声で駆け出す。
その背を追いかけながら、リュシアが静かに微笑んだ。
「……本当に、帰ってきたんだね」
「そうだな」
カイルも頷く。去年と同じ景色、けれど胸に抱く感情は違っていた。
◇
庵の戸口を開けると、温かな声が迎えた。
「おかえりなさい」
アサヒが柔らかく微笑み、ルシアンは静かに手を振る。
その隣には、鮮やかな衣装を纏ったエリシアと、落ち着いた佇まいのレオンの姿もあった。
「母上、それに兄上まで……!」
アルトが驚きに目を見開く。
レオンは微笑んで「庵に来るのは初めてだな」と言い、エリシアは「皆の成長を直接見ておきたくて」と言葉を添えた。
ジークが思わず肩を竦める。
「うわぁ、すごい顔ぶれになっちまったな……」
ミナは少し緊張しながらも、「でも、なんだか安心する」と囁いた。
◇
囲炉裏の火がパチパチと弾ける。
夜の団欒は、去年とは比べものにならないほど賑やかだった。
ジークとミナは、自然に隣同士で食卓を囲み、仲睦まじい様子を隠そうともしない。
リュシアは穏やかな笑顔を見せ、カイルと視線が合うたびにわずかに頬を染める。
アルトはアマネの配膳をさりげなく手伝い、アマネは「ありがとう!」と満面の笑みを返す。
そんな姿を、エリシアとアサヒが母のような眼差しで見守り、レオンは「……眩しいな」と小さく漏らした。
ルシアンは相変わらず多くを語らず、膝にカグヤを抱きながら静かに微笑むだけだった。
◇
食後、アマネは懐から小さな包みを取り出した。
「みんなに渡したいものがあるんだ」
取り出されたのは、小さな装飾を施された通信機。
去年から試作を重ね、ジークとミナの協力でついに完成したものだ。
「これで、離れていても繋がれるんだよ!」
目を輝かせるアマネに、ミナが得意げに胸を張る。
「私たちの努力の結晶だからね!」
ジークは頷き、「これなら仲間の距離も超えられる」と真剣に言った。
通信機は順番に配られていく。
アルト、リュシア、カイルの手に。
そして、ルシアンとアサヒへ。
最後に、エリシアとレオンにも。
「これは……すごいわね」
エリシアが感嘆し、レオンは少し眉を寄せた。
「軍事利用の危険もある。だが……仲間を繋ぐためなら、これほど心強いものはない」
その真剣な声に、皆は黙って頷いた。
◇
囲炉裏の炎が静かに揺れ、夜は更けていく。
去年よりも確かに深く結ばれた絆を胸に、庵での新たな夏が始まろうとしていた。
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