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先生たちの評価—謙虚を越えて

午後の特別講義。

勇者候補たちが実戦演習を終えると、観覧席にいた教師陣の間で静かな囁きが広がった。

「見たかね。最後の判断……勇者候補の殿下ではなく、あの少女が前へ出た」

剣術助教カミルが、腕を組みながら淡々と呟く。

「しかも、迷いなく仲間に合図を飛ばしていた。あれは計算よりも信頼から来る動きだわ」

保健医セラフィーナが頷く。

魔導学助教のイレーネは、にやりと唇を吊り上げる。

「勇者かどうかなんて関係ないわね。あの子は“女の子”としても輝いてる。……あれは恋を知った顔よ」

思わず赤くなるアルトを横目に、ジークが小さく吹き出した。

訓練を終え、汗を拭いながらアマネは控えめに仲間へ振り返った。

「えっと……私、また出しゃばっちゃったかな」

「バーカ」

ジークが即答する。

「前までは少し謙虚が過ぎて卑屈に見えてたからな。

でも今は、ちゃんと“自分の声”で動いてる。それがいいんだよ」

その言葉に、アマネは一瞬目を丸くしたが、やがて照れたように笑った。

「……そっか。ありがとう、ジーク」

教師陣の視線が彼女に注がれる。

セラフィーナは小さく呟いた。

「自分を卑下せず、でも驕らない。……あの子の在り方こそ、人を導くのかもしれない」

イレーネが茶目っ気たっぷりに笑う。

「ねえ、これからますます目が離せないわよ。あの子、男の子たちの心まで掴むんだから」

アルトとカイルが同時に咳払いをして、周囲はどっと笑いに包まれる。

夕暮れの廊下で、アマネは窓の外の光を見つめていた。

(私……前よりずっと、胸を張れてる気がする)

それは卑屈な少女の呟きではなく、仲間と共に歩む“勇者の芽”を持った少女の決意だった。


お読みいただきありがとうございます。いけるところまで連続投稿!(不定期ですが毎日目標)。

面白かったらブクマ&感想で応援いただけると嬉しいです。


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