表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

156/471

揺れる信仰、支える絆

王城の奥、静謐な応接室。

豪奢ではなく、あくまで落ち着いた雰囲気の中、三人の女性が向かい合っていた。

王妃エリシア、修道会総長アメリア、そして修道院長マリア。

「修道院でのこと、そして学園でのこと――リュシアの変化について、率直に伺いたいわ」

エリシアが切り出す。視線は柔らかいが、その奥には確かな意志があった。

アメリアが口を開いた。

「掟に従わせるのではなく、彼女は己の言葉を持ち始めました。それをどう見るかが、今問われています」

マリアは一瞬言葉を失った。

「……本来、聖女は己の声を持たぬ者。祈りとは、ただ神に捧げる形式であったはず。

だが……あの子の瞳を見てしまった今、それを否定できない」

エリシアは静かに頷き、重ねる。

「リュシアは“聖女”である前に、一人の女の子よ。その心を持って祈るからこそ、人のために光を呼べる」

アメリアも続ける。

「実際、彼女の祈りは以前より強く、澄んでいます。形式をなぞるのではなく、自分の言葉で祈った時にこそ、より大きな力が宿っている」

マリアの肩が震えた。

沈黙ののち、かすかな声が漏れる。

「……掟に従わせることだけが正しいと思っていた。けれど……伯母として、私はあの子の笑顔を守りたい」

その言葉に、エリシアとアメリアは穏やかな笑みを交わす。

「では、もう一人。彼女の母――イザベラにも会わせましょう」

エリシアの提案に、マリアは驚きの色を浮かべた。

「姉上に……? あの病の身で」

「だからこそです。リュシアが“女の子”であることを、母だけが伝えられるのですから」

応接室を後にしたマリアは、深い吐息をこぼした。

(掟を守ることが全てではない……あの子を、そして姉を守ることもまた、私の務めなのだ)

胸の奥に、新たな決意が芽生えていた。


お読みいただきありがとうございます。いけるところまで連続投稿!(不定期ですが毎日目標)。

面白かったらブクマ&感想で応援いただけると嬉しいです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ