崩れ落ちる影—黒聖女の最期
崩れ落ちる修道院。
闇の光を纏ったコルネリアの身体は、アマネの一閃によって砕かれ、核の黒き輝きが虚空に散った。
「……っ……あぁ……」
膝をつき、崩れ落ちながら、コルネリアの声が震えた。
「私は……聖女になりたかった……それだけ、なのに……」
リュシアが駆け寄り、涙に滲んだ瞳でその手を取る。
「あなたも……ずっと、祈っていたのね」
その言葉に、コルネリアの唇がかすかに震え、光の粒となって消えていった。
カイルは胸に手を当て、静かに祈る。
「安らかに……どうか、人として」
彼の声は形式ばったものではなく、ただ一人の少女を悼む祈りだった。
◇
修道院の外――。
地響きと共に吹き飛んだ扉から、民衆が押し寄せ、混乱の中で声を上げる。
「殿下が……悪魔を討ったのか!」
「いや……違う、最後に刃を振るったのは……あの少女……?」
「だが、あれは……名も知らぬ娘ではないか」
群衆の視線はアルトに、そしてアマネに交互に注がれる。
アルトはただ黙して仲間のそばに立ち、アマネは剣を収めながら振り返らない。
◇
仲間の輪の中――。
ジークが息を吐き、「……やるじゃねぇか」と低く呟く。
ミナは声を震わせ、「本当に……切っちゃったんだ……」
リュシアは涙を拭いながら、「……やっぱり、光を呼ぶのはあなた……」と小さく。
カイルはただ見つめ、心の奥で「勇者なのは――」と言葉にならない思いを飲み込む。
◇
群衆のざわめきはやまない。
「勇者は殿下だ!」
「いや……あの少女が……」
光と影の中で、その答えはまだ揺れていた。
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