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暴走の鐘—黒聖女の顕現

黒光が荒れ狂う礼拝堂。

聖像の足元が砕け、石片が散る。

その中央で、コルネリアは両腕を広げ、虚ろな笑みを浮かべていた。

「力が……満ちる……!

これが、私が求めていた“証明”……!」

黒い聖光は鎖のように彼女の身体を取り巻き、背からは禍々しい翼の幻影が広がっていた。

かつての修道女の面影は消え、ただ「黒聖女」と呼ぶべき姿がそこにある。

リュシアは震える声で呼びかけた。

「コルネリアさん……! それはあなたの力じゃない! 悪魔が――!」

「黙れ!」

その一喝が雷鳴のように轟き、リュシアは息を呑んだ。

「私は選ばれる! リュシア、あなたじゃない……! この私こそが……!」

ジークが一歩踏み込み、大剣を構えた。

「うるせぇ! 選ばれようがどうだろうが、もうアンタは仲間を傷つけてる!

止めさせてもらうぜ!」

轟音と共に斬撃が走る。

だが、黒聖光の障壁に弾かれ、火花が散った。

ジークは舌打ちし、押し込もうと力を込めるが――逆に吹き飛ばされる。

「ジーク!」

ミナが即座に駆け寄り、仕掛けを展開して衝撃を緩和する。

「ダメ、直接じゃ防御が硬すぎる……! 祈りの力そのものが反転してる!」

アルトが息を整え、前に出る。

「なら……彼女を説得しながら隙を作るしかない!」

瞳に迷いはなかった。

「これは戦いで終わらせちゃいけない!」

カイルが頷き、詠唱で補助魔法を展開する。

「みんな、彼女の声を引き出そう! まだ残ってるはずだ!」

その時だった。

「ゴォォン……」

礼拝堂の鐘が、ひとりでに鳴り響いた。

黒聖光が屋根を突き破り、空へ奔る。

眩いはずの光が夜空を染め、街の広場にまで溢れた。

「な、なんだ……!」

「修道院から……黒い光が……!」

人々が次々と集まってくる。

大通りから、路地から、修道院の前に民衆が押し寄せ、ざわめきが広がった。

――計画通り。

暗がりの奥で、教皇の側近が密かにほくそ笑む。

「これでよい……。民衆は“黒聖女”を目の当たりにする。

混乱は、教会の力を誇示する好機となる……」

一方、礼拝堂の中。

天井から差し込む夜風が、黒光と交じり合って渦を巻いていた。

アマネが剣を握りしめ、一歩踏み出す。

「……こんなの、放っておけない」

黒い光に包まれるコルネリアへと、まっすぐ声を投げる。

「あなたの中に、まだ“声”があるはず! ――私たちに聞かせて!」

その一瞬。

コルネリアの唇が震え、掠れた声が漏れる。

「……わたしは……聖女に……なりたい……」

リュシアが涙ぐみ、両手を合わせる。

「その願いは、間違ってない……! でも、方法を間違えないで!」

だが――黒光がさらに膨れ上がり、コルネリアの身体を覆った。

瞳は完全に虚無へと沈み、声は闇に呑み込まれていく。

「消える……! 完全に取り込まれる!」

カイルの叫びが響いた。

仲間たちは歯を食いしばり、それぞれ武器を構える。

広場に集まる民衆を背に、礼拝堂を突き破って――黒聖女との戦いが始まろうとしていた。


お読みいただきありがとうございます。いけるところまで連続投稿!(不定期ですが毎日目標)。

面白かったらブクマ&感想で応援いただけると嬉しいです。


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