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黒き聖光—説得の刃

礼拝堂に重く冷たい空気が満ちていた。

リュシアを解放した直後、祭壇の奥からゆらりと現れた影――コルネリアだった。

白の修道服は漆黒に染まり、手に掲げる聖印は黒い炎を纏っている。

銀の髪が乱れ、瞳は虚ろで、それでも口元には笑みを浮かべていた。

「……聖女は、一人でいい……。

なぜ、あなたが選ばれて、私は……捨てられたの……?」

リュシアは震える声で、必死に呼びかけた。

「コルネリアさん……! あなたは捨てられたんじゃない。私だって、ただ選ばれただけで……!」

だが、その言葉は彼女の心に届かない。

黒い聖光が空間を震わせ、礼拝堂の窓をきしませる。

カイルが前に立ちふさがり、低く言った。

「まだ戻れる……! その力に飲み込まれたら、君自身が消えてしまう!」

「戻れる……? ふふ……。

神は私を試した。ならば私は答えるだけ。

――力で、証明してみせる!」

瞬間、黒い光が弾けた。

祈りの言葉と共に放たれた聖光は、本来なら癒しであるはずが、呪いと痛みを伴って迫る。

「くっ……!」

ジークが大剣で受け止めるが、刀身が軋み、衝撃が全身を揺さぶった。

「これ……癒しじゃねぇ! 焼けるみてぇに痛ぇ!」

ミナが道具を展開し、結界を張る。

「黒い聖光……! 精霊回路が反転してるんだわ! 本来の光を……呪詛に変えてる!」

「だったら……」

アルトが一歩前へ進む。

「君はまだ“聖女”を信じているんだな。本当は、救いを願っているはずだ!」

その言葉に、一瞬だけコルネリアの瞳が揺れた。

だが次の瞬間、虚ろな笑みがそれを塗り潰す。

「救い……? 救われたいのは、あの子だけ? リュシアだけ?

私はずっと……欲しかったのに!」

黒光が奔り、床石を焼き裂いた。

リュシアは思わず身をすくめる。だが、アマネが前に飛び出した。

「コルネリアさん!」

小柄な身体で、まっすぐに声をぶつける。

「あなたが誰かを羨むのは、きっとすごく苦しい。でも……!」

アマネは瞳を逸らさず叫ぶ。

「私は敵じゃない! あなたを切り捨てるために来たんじゃない!

――あなたの声を、聞きたいから来たんだ!」

黒光が放たれた直後、その言葉にわずかな揺らぎが走る。

聖光の奔流が一瞬だけ弱まり、礼拝堂の空気が静まった。

コルネリアの唇が震えた。

「私の……声……?」

だがそのかすかな囁きは、次の瞬間、深い闇に呑み込まれる。

「違う……私は器。声など要らない。示すのは――力!」

黒光が再び爆ぜ、天井がひび割れる。

仲間たちは構え直し、ジークが低く唸った。

「……今の、届いたよな。だが……もう一押しだ」

カイルは冷静な瞳でコルネリアを見据える。

「まだ人の声が残っている。――必ず、取り戻す」

揺らぎと暴走、その狭間に立つコルネリアを前に、仲間たちは刃を握り直した。


お読みいただきありがとうございます。いけるところまで連続投稿!(不定期ですが毎日目標)。

面白かったらブクマ&感想で応援いただけると嬉しいです。


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