食堂の邂逅 ―新緑と豪快な声―
春の新緑が学園の中庭を染め、演習場の空気にはまだ熱が残っていた。午前の訓練を終えたばかりで、制服の袖には砂埃がついている。
「よーし今日はここまで!」
教官の声で解散になり、剣を振るい続けた腕を下ろす。周りの生徒たちが疲れた様子で肩を回す中、緑髪の少年だけは違った。
「ははっ、もう終わりか? まだ動けるぜ!」
ジーク。汗に濡れた髪を乱暴にかきあげ、肩に斧を担いだ姿は、他の生徒より一回りも大きく見えた。Aクラスの実力者。
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訓練の後、昼の鐘とともに食堂へ移動する。ざわめきに包まれた広い空間で、ジークは窓際に陣取り、山盛りの肉皿にかぶりついていた。
「肉はやっぱ二倍だな! 腹が減ってちゃ戦えねえ!」
骨ごと豪快にかじり取るその姿は、訓練場での豪放さとまるで変わらない。
隣に腰を下ろすと、彼はにかっと笑った。
「お、来たな。飯は一緒に食った方がうまいからな!」
向かいに座ったカイルが、眼鏡を押し上げて口を開く。
「……ジークさんは騎士団長のご子息ですよね。そういうお立場を、気にされないのですか?」
ジークはスープを一気に飲み干し、肩をすくめた。
「身分? 関係ねえよ。強いか弱いか、それだけだ」
真っ直ぐな声が響く。春の光を背に受けた横顔には、迷いがなかった。
カイルはため息をつき、スプーンを皿に落とす。
「……単純ですね。けれど、だからこそ揺るがないのかもしれません」
食堂の喧騒の中で、豪快な声がひときわ響く。
訓練で見せた力強さと、庵で聞いた薪割りの音が重なった。飾り気のない直線の強さ。
窓の外では、新緑が風に揺れていた。
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